いまや国内総生産(GDP)で日本を上回ったとされる、中国経済の先行きが不透明感を増している。

中国共産党の最高指導部である政治局は7月30日、「安定成長、構造調整、改革推進を統一的に進める」との方針を決めたが、高度計成長を続けてきた中国の持続的成長は可能だろうか?

中国経済が直面しているバブル問題と、その対策である「リコノミクス」について解説したい。

■「リコノミクス」とは?
「リコノミクス」とは、李克強首相による経済政策のことである。このような呼び名は、1980年代の米レーガン政権による「レーガノミクス」にならったもので、別に、安倍政権の「アベノミクス」をマネしたものではない。

「リコノミクス」の中身は、(1)景気刺激策を行わない、(2)金融機関の負債(レバレッジ)を抑制する、(3)構造改革の3つである。

一口で言えば「バブル退治」で、過度な信用拡張を抑え、併せて長年の懸案である国営企業の改革を進め、経済全体を内需型へと転換していくことである。では、なぜこのような政策が迫られるようになったのだろうか。

■高度成長の「ツケ払い」
中国経済は1970年代末の改革・開放以来、高度経済成長を続けてきた。とくに1990年代前半のトウ小平による「南巡講話」、2001年の世界貿易機関(WTO)加盟でその発展は加速された。成長を支えたのは、国内の開発(固定資本形成)と先進国向けの輸出。とくに前者は、GDPの4割以上を占めた。

中でも、2008年11月には4兆元(約53兆円)規模の投資を含む経済対策が実施されたことの影響は大きい。これは、リーマン・ショックで大きく落ちこんでいた世界経済にとって大きな助けとなり、中国経済の成長にも貢献した。半面、中国国内では投資活動が過剰となった。中国の最大の輸出相手地域である欧州経済が、2010年頃からの「ソブリン危機」の影響で落ち込んだことの影響で、中国の輸出は全体的に振るわなくなったが、投資による生産設備の増強は続き、鉄鋼などの過剰生産が明白になった。早い話が「売れないのにつくりすぎた」のである。

他方、道路、鉄道等のインフラ関連投資も伸び、不動産価格も上昇した。2013年1月の不動産価格(前月比)は、主要70都市のうち53都市で上昇した。明らかなバブルだが、これを支えたのは地方政府の借金と、一般投資家への理財商品販売による資金集め(これがいわゆる「シャドーバンキング」)だった。シャドーバンキングの規模は、推定で24兆元(約380兆円)、GDPの4割にも達する。

これを放置すればバブルが早晩はじけ、経済は急降下、政府や国民も含めて多額の負債を背負い込む事態となる。中国政府・党としては、バブルを軟着陸させ、処理する必要性に迫られたのである。ある意味で、高度経済成長の「ツケ」を払わされようとしているわけだ。

■軟着陸は可能か?
だが、古今東西の歴史の中で、バブルの軟着陸に成功した例は皆無に近い。

中国政府は繰り返し、不動産価格抑制策を実施しているが、2013年4月の不動産価格は70都市のうち67都市で上昇している。生産能力過剰産業における企業の合併・再編なども進め、過剰投資を抑えようとしているが、まさに「上に政策あれば下に対策あり」でうまくいっていない。政府は、幹部の外出先での飲食まで制限して景気の過熱を抑えようとしているほどだ。

だが、経済を引っ張ってきた投資を抑えようとしているわけで、その影響は深刻になることは想像に難くない。「バブル退治」が成功したとしても、失業問題の深刻化などの影響が考えられる。その不満が政府に向けば、どうなるだろうか。

その中国経済と深い関係にあるのが隣国・日本である。中国が危機に陥れば、日本、さらに世界経済も無事では済まない。アベノミクスの成否のカギを握っているのは、実は中国かもしれないのである。

(編集部)

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