大幅なコスト削減を実現!オフショア成功企業が語る活用の秘密~GDOはなぜベトナムを選んだか?~」「現場のエンジニアにも大きなメリット!GDO 村松氏が語るオフショア開発の現状~要求を確実に伝える能力がエンジニアに問われる時代に~」で、二回に渡りベトナムでオフショア開発事業を成功させたゴルフダイジェスト・オンライン社(以下、GDO)に話をうかがってきた。

オフショア開発の利用は企業としてはもちろん、日本人エンジニアとしてのメリットも高いことが分かってもらえたことと思う。しかしその一方では、これまで日本国内だけで開発をしてきた会社がオフショア開発に取り組むにあたっての課題も垣間見えたのではないだろうか。

そこで今回は、GDOに対しベトナムでのオフショア開発サービスを提供しているセタ・インターナショナル株式会社の代表取締役である廣瀬 倫理氏(以下、廣瀬氏)に、「オフショア開発は、どういった部分でハードルが高いのか?」について、さらにオフショア開発サービスを提供する側の苦労や工夫などについて話をうかがった。

■最初はオフショア開発の顧客だったセタ・インターナショナル
セタ・インターナショナル株式会社は2011年6月に設立された日本法人である。親会社は米国法人の「SETA INTERNATIONAL」(以下SETA US)と、日本の株式会社テラスだ。廣瀬氏はテラスの取締役副社長でもある。

廣瀬氏は「2010年頃、テラスは優秀な技術者の確保に悩んでおり、オフショア開発を選択肢の1つとして検討し始めていました。」と当時を振り返る。

「そこで紹介されたのがSETA USです。SETA USはベトナムに開発拠点を持ち、既に米国や欧州などで高い実績がありました。実際にベトナムへ視察に行ってみると、日本語の通じるベトナム人技術者がいましたし、ハノイ工科大※ IT専攻卒の技術者や、日本の大手SI企業で働いていた経験のある技術者らがいて、これならビジネスを検討する価値があるのではないかと思いました。そこでまずはテストケースとして、テラスで1件開発を任せてみようということになったのです。」と廣瀬氏は続けた。
※ハノイ工科大:ベトナム最難関の工業系大学。IT専攻は特に難易度が高いと言われる

つまり利用者としてベトナムのオフショア開発を使う立場で関わったことが、オフショア開発に関わった初体験だったというわけだ。それがなぜ子会社を設立し、ベトナムオフショア開発を展開させていこうと思うまでになったのか?

「『オフショア開発の難しさ』と直面したからこそですね。日本と同じ感覚では通じない。欧米で実績があり、優秀なエンジニアが揃うSETAが相手でも、最初はうまくいかなかった・・・。しか、1年くらいかけて色々と改善しようと試行錯誤した結果、非常にいい内容の開発チームができた。その頃には、我々もオフショア開発で失敗するパターンや成功するためのノウハウがわかってきた。この経験を日本で活かし、広く展開していくべきだと思い、日本法人を設立し本格的な参入を開始したのです。」とオフショア開発の難しい部分を語ってくれた。
セタ・インターナショナル株式会社 代表取締役 廣瀬 倫理氏


■成功と失敗の分かれ目は
では、うまくいかなかったというオフショア開発の最初の状況はどんなものだったのだろうか。

「ベトナムの人ではあるが日本語は通じる。技術力も問題ない。そう判断して始めたのですが、こちらが指示した通りの内容が出てこない、ちょっとテストすればわかるようなバグが残っている、指定した期日に間に合わない、というように最初は納期や品質などで問題が頻発しました。(苦笑)」と廣瀬氏。

オフショア開発を初めて利用する企業の例にもれず、やはりコミュニケーションがうまくいかない問題は頻発していたようだ。しかし、そんな状況は改善され、現在は、GDOをはじめ、大手企業や有名ベンチャー企業にベトナムでのオフショア開発を自ら提供する立場になった。そこに至る経緯について「コミュニケーションの改善が重要課題だった」と廣瀬氏はいう。

「毎月のように日本人エンジニアがベトナムのハノイに赴き、様々な改善をしました。信頼関係の構築、仕様の伝達方法の見直し、開発管理方法の見直し、それと品質に関する文化的な意識の差を理解することが重要でした。」と、廣瀬氏は苦労話を打ち明けてくれた。

具体的にはどのような事をしたのだろうか。

「例えば、仕様の伝達方法の改善では、間違いなく伝わるように、設計書を日本側できちんと作り、それを現地でブリッジエンジニアにしっかりと伝えるようにすることでだいぶ問題が解消しました。」

『丸投げはNG』というGDOの話もあったが、オフショア開発をスムーズに進めるには詳細な設計書が必要ということだろう。これは日本の企業内での開発も同じことである。

「直接ベトナムのエンジニアと進める場合はそうするのが間違いないでしょう。口頭の指示や散発的なメール連絡に頼らず、ドキュメントを残すことが重要です。当社が対応させてもらう場合でも、お客様には正確な仕様伝達が重要ということを常々説明しています。」(廣瀬氏)

そうなると、なかなかハードルが高いように思われる。セタ・インターナショナルの取引先を見ると、全ての顧客企業が細かい設計書を作成して指示をしているとは思えない。

「そういう企業さんの場合は、親会社のテラスの日本人SEがその部分をサポートします。オフショア活用に長けた日本人グローバルSEのノウハウとスキルをお貸しするという事です。対面するのは日本人のSEです。」

たとえば請負開発の場合は、日本人エンジニアが窓口になり、要件定義や設計も行ってくれるので、実際の開発がベトナムで行われるとしても、顧客側ではオフショア開発を利用していることを意識する必要がないのだ。

「もう1つの方法としては、お客様専用の開発リソースを人月単位で提供する準委任の契約形態『デディケート契約(一般的にラボ契約とも言われる)』に、日本人グローバルSEのリソースを提供する形があります。」と廣瀬氏。

どのようなドキュメントをどこまで作ればいいか、あるいはアジャイル形式でもどのように仕様を伝達し、開発工程を管理したらよいか、といった課題を、ベトナム人技術者との開発経験が豊富なグローバルSEがサポートしてくれるという。

オフショア開発というと、日本人技術者が前面に出てこない印象があったが、セタ・インターナショナルは、日本の開発会社が親会社で有る強みを最大限に活かし、他にない形のオフショア開発を実現しているようだ。

「デディケート契約は、チームのメンバーがベトナム人であるため低コストです。一方で、上手く使いこなすには、基本的なプロジェクト管理の知識や経験・ノウハウが必要です。コミュニュケーション不全に陥ると、予想外のコスト増大を招きます。そのような事態を防ぐ方法を知った日本人グローバルSEのサポートを提供しています。」

なお、日本人グローバルSEのサポートというのは、月間8時間までは通常料金内で含まれているという。他にも、日本語能力の高い通訳スタッフによる電話会議サポートや、QA(品質管理)チームのリソースを月間40時間まで使うことが、無償サービスで付属するそうだ。
ベトナムの開発チーム


■「日本品質」での提供にこだわり続ける理由
とはいえオフショア開発の利用には、不安がつきものである。

「一言で言えば、品質の問題です。我々が最初に発注側としてオフショア開発を利用したときのことをお話しましたが、日本側が当然のものとして要求するあらゆる項目の品質が、受注するオフショア側では当然のものではない。そのギャップを乗り越えグローバル開発成功のノウハウを提供することがセタ・インターナショナルのビジネスです。」

廣瀬氏は次のようにそのノウハウの一端を挙げた。

1.日本人技術者による定期的な技術指導
開発スキル自体は日本国内の技術者に引けをとらないレベルでも、日本ならではの考え方や価値観、開発方法について共有する事が大切である。

2.専門スタッフによる社内での日本語教育
日本語を理解できる開発エンジニアはブリッジエンジニアとして重用される。優秀なブリッジエンジニアを自社で育成することによって、日本向けのサービスレベルを向上させ続けている。

3.品質管理専門チームによるQAサービス
日本語と英語でレポートが可能な専門チームによる、仕様書に基づいたテスト設計、テスト手順書作成、テストの実施。

「こうした積み重ねにより、ベトナムの開発チームと発注されるお客様との信頼関係を深め、オフショア開発のメリットを活かせる体制を築くことができました。」

オフショア開発のメリットは単純なコスト削減だけにとどまらないと廣瀬社長。

「企業経営の過程では、本来の企業目的以外にもしなければならないTODOやルーティンワークがたまっていきます。競争力を高め、利益を生むためだけにリソースを使うわけにはいかなくなっていく。そこでオフショア開発という、日本での常識が通じない外からの視点を入れることで、業務を整理することができるのです。核となる部分や強みが明確になり、適切なリソース配分が可能になります。」

セタ・インターナショナルのベトナムオフショア開発の向こうには、日本企業の経営資源最適化という効果が待っている。

なお、セタ・インターナショナルでは、ベトナム ハノイ開発センターを視察できるツアーを開催する。出発予定日は、9月11日(水)、9月16日(月)、10月28日(月)の3回だが、同社日本人スタッフが同行するので、初めてでも安心して視察できる。それ以降の視察ツアーは、同社のサイトにて告知される。

海外ITアウトソーシング、オフショア開発、グローバル展開等に興味のある人は、同ツアーの参加を検討してみてはいかがだろうか。

ベトナム ハノイ開発センター視察ツアー等の問合せ
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