不動産市場が活性化している。不動産ファンドの残高は拡大を続けており、6月末の残高は約27兆円で過去最高。とくに、不動産投資信託(REIT)による取得が進んでおり、資産額は10兆4000億円に達している。対して、私募不動産ファンドの資産額はやや減少した。

背景は、不動産価格やオフィス賃料の上昇期待。事実、7月の「地価動向報告」によると、3か月前に比べ、調査対象の3分の2に当たる99地区で地価が上昇。三大都市圏を中心に、地方都市でも住宅需要が追い風になって、地価反転の動きが出始めた。「アベノミクス」による株高や金利の先高観も、マンション販売などに追い風となっている。


こうしたことを背景に、不動産大手の業績は堅調に推移している(三菱地所<8802>はリーマン・ショック後も東京・丸の内地区の再開発を中心にオフィスビルの床面積を拡充、業績を大きく伸ばしている。三井不動産<8801>の売上高も、リーマン・ショック前の水準を1割以上超える見込み。住友不動産<8830>も、マンション販売が好調に推移し、2013/4~6月期は営業利益が前期比約35%の増益予想)。

■アマゾンなどのネット通販の拡大に対応
各社とも注力を進めているのが、インターネット通販に対応するための大型物流施設の開発。ネット通販会社や物流会社に貸し出す方針で、貸借企業にとっては不動産の価格変動リスクなどを回避できるメリットがある。開発側にとっては、オフィスビルと比べて契約期間が長いため、安定した賃料収入が見込めるという利点がある。市場では、即日配送などの高度なサービスへの指向が強まっており、首都圏大型施設の空室率は低下傾向だ。

三菱地所は現在、年間2棟を手がけているが、今後は4棟程度まで増やす計画。現在は米国系不動産投資顧問と共同開発した施設が主力だが、単独での開発も検討する。

三井不動産は今年に入ってから物流市場に参入。2018/3月期までに2000億円を投じる計画だが、さらなる上積みを検討中だ。

■再開発、マンション事業も好調
都心部を中心とする再開発事業やマンション販売も、相変わらず活発である。7月の首都圏マンション発売は、前年同月比で31.6%の大幅増となった。

三菱地所は、準大手ゼネコンのフジタ(大和ハウス工業<1925>の子会社)と組んで、東京都西新宿に全国初の60階マンションを開発する。東京・大手町周辺でも、星野リゾート(長野県)と連携して高級旅館を建設する計画だ。利用者の半数は訪日外国人客を見込む。海外でも、丸紅<8002>と組み、中国吉林省で不動産開発に乗り出す。

住友不動産は東京都品川区のJR大崎駅南側を約1000億円を投じて再開発する。大型オフィスビルとマンションを予定し、完成は2017年。横浜市戸塚区で建設中の「ココテラス横濱戸塚ヒルトップ」では、敷地内に専用農園を設けるといった新機軸の開発も行っている。

三井不動産は、三井物産<8031>と連携し、東京・大手町周辺を再開発する。物産本社を含む3棟のビルを解体し、最新鋭の大型複合ビルに生まれ変わらせる計画。中国・上海市やマレーシア・クアラルンプール国際空港敷地内でも、大型商業施設の開発を進める。

■史上最高値に向かう大手不動産株
不動産各社にとっての当面の懸念材料は、来年4月に始まる予定の消費税増税にともなう「駆け込み需要」の反動。ただ、政府は消費税増税の際の住宅ローン減税拡充を検討しているほか、住宅ローン金利や物件価格の先高観が根強く、購入意欲が衰えない可能性も高い。

各社にとっては、需要の強さに関する見極めが重要になってきているが、いたずらな心配は必要ないだろう。

三井不動産、三菱地所、住友不動産などの大手不動産株の出直りは急で、いずれも4月に付けた年初来高値奪回が視野に入ってきた。年初来高値奪回から、目指すは2007年の史上最高値。各社の株価の動向に目が離せない。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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