アップルの新しいスマートフォン「iPhone 5s」と「iPhone 5c」が発表された。発表前にある程度のリーク情報は流れており、その中にiPhone 5cは、新興国向けで廉価版(Cheap Edition)のiPhoneになるという情報があった。CはCheapのCであるというものだ(実際はColorのCであるという)。

上位モデルのiPhone 5sと比べると、なるほど低価格ではあるが、本体価格1万円から3万円程度で販売されている低価格なAndroidスマートフォンへの対抗機種になるほどには安くはならなかった。

日本での販売価格はまだ公表されていないが、アメリカでの長期契約無しの価格は16GB版が549ドルの約5万5千円、32GB版が649ドルの約6万5千円だ。これは低価格なAndroidスマートフォンの2倍以上の価格設定になっている。とてもCheapとは言えない価格である。

■値段が高すぎるiPhone
海外では低価格スマートフォンの需要がある。日本のような先進国に比べて所得が数分の一の国では、本体価格が6万円から8万円程度になるiPhoneといったハイエンドスマートフォンは、購入するのをためらってしまうほど敷居の高い製品だ。

それでも富裕層にはある程度は売れているが、そうした国々で、もっとも需要があるのは低価格のスマートフォンである。当然ながら性能は価格に比例するが、おおよそ2万円程度で販売されている物なら、必要十分な性能を備えている製品が多い。

実売で3万円から4万円程度のiPhoneが出てくれば、低価格Androidスマートフォンの対抗機種になるだろう。しかし、現在公表されている価格は、低価格スマートフォンに比べると2倍から3倍程度も高価になっているため対抗機種になることはできない。

■iPhone 5cによって、なかったことになってしまったiPhone 5
上位モデルのiPhone 5sと同一容量で比較すると、その差は100ドルの1万円。iPhone 5cは単純な廉価版ではなく、iPhone 5を多少改良しながら価格を若干押さえ、カラーバリエーションを増やして追加された。いわばiPhone 5のバリエーションの1つだ。

そのためiPhone 5はラインアップから消滅し「iPhone 5なんてなかったんだ」ということにされ、2世代前となるiPhone 4sの8GB版以降は、iPhone 5c、そしてiPhone 5sというラインアップになった。しかもiPhone 4sの価格は、長期契約無し版で450ドルの約4万5千円で、こちらもそこまで価格が下がっているわけではない。

6万5千円のiPhone 5cに1万円プラスするだけで2倍も高性能になるなら、高性能モデルを選ぶ人のほうが多いだろう。価格や性能に加えてデザイン性や高級感を重視する人もiPhone 5sを選ぶことが多いだろう。

日本では1~3万円といった低価格のAndroidスマートフォン自体が販売されていない。こうした国で「安いiPhone」として初めて廉価版という位置付けになると思われる。しかし、カラバリで選んだという主張でもない限り「高い=高性能」というイメージに対し「安い=性能の悪い」というイメージは付いてくる。iPhone 5cユーザーの前では、iPhone 5sを自慢げに取り出すことはあっても、iPhone 5sユーザーの前で自慢げにiPhone 5cを取り出す人は少ないだろう。

日本以外の場合、単純に安いスマートフォンを選ぶなら、iPhone 5cの半額以下で販売されているAndroidに流れるのは確実で、今のところAppleはこの市場を狙っていないということが今回の発表ではっきりとしたと言える。

しかし、これらの価格はアメリカでのAppleオンラインサイトでの販売価格であって、各キャリアの販売施策によっては実際の販売価格はより魅力的になる場合もある。特に日本ではドコモでの取り扱いも始まるため、各社の顧客獲得競争はより激しくなっていくだろう。

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

ITライフハック
ITライフハック Twitter
ITライフハック Facebook

デジ通の記事をもっと見る
Kindle Paperwhiteの前モデルユーザーは新モデルに乗り換えるべきか?
ThinkPadもYogaに! IFA 2013で発表されたASUS、Acer、Lenovoの新製品
魅力満載! IFA 2013で発表されたソニーと東芝のタブレット&コンパチノート
日本ではお買い得!電子書籍リーダーKindle Paperwhiteの新モデル登場
Surface導入で法人向けにもWindows 8.1をアピールするマイクロソフト