米連邦準備理事会(FRB)が18日、ウワサされていた金融緩和の縮小(いわゆる「出口」)を先送りし、現在の量的緩和政策(QE3)維持する決定を行った。

「予想通り」「意外」と見方は2分されているが、株式市場などはすでに「出口」を折り込みつつあった。逆の展開になったことで、米株式市場の株価は最高値を更新、日本でも上昇した。

なぜ、FRBは「出口」を見送ったのだろうか?



■経済的要因は?
見送りの要因は大きく2つで、経済的要因と政治的要因だ。厳密には分けられないのだが、とりあえず分けておく。

経済的要因は、米国の雇用情勢の問題だ。以前から、FRBは「失業率6.5%」を緩和政策終了の目安としてきた。8月の失業率は前月から0.1ポイント改善したものの7.3%で、まだ1ポイント近く悪い。また、8月の非農業部門雇用者数は16万9000人で、予想の18万人より低かった。

「出口」に進めば、ようやく回復してきた住宅市場や個人消費も冷え込ませ、雇用の改善もさらに遠のいてしまう。これが最大の理由だ。

■政治的要因は?
政治的要因とは、雇用問題が改善しないことで、来年に控えた中間選挙に悪影響を与えることだ。現在、米議会は上下両院の「ねじれ」下にある。仮に、雇用問題を機にオバマ政権への批判が高まれば、両院とも野党・共和党に握られてしまう可能性さえある。FRBの次期議長に予定されていたサマーズ元財務長官が辞退に追い込まれたのも、選挙への影響を恐れる与党・民主党内の反発が背景だ。

政治的要因には、外国からのものもある。以前も述べたが、米国の「出口」を予想して、新興国からの資金流出という状況がある。新興国側は自国経済への悪影響を恐れて、米国に「慎重な対応」を求めている。9月初旬に開かれたG20(20カ国・地域)首脳会合でもこの問題が取り上げられ、米国は「緊密な連携」を約束させられた。

「出口」見送りの背景は以上のようなものだ。

■株高は続くか?
見送りによる株高は、投資家にとっては歓迎できることだ。ただ、米国の「出口」はいずれ避けられないため、現在の株価上昇は遠からず落ち着くだろう。これは念頭においておく必要がある。

株価上昇の喧騒に惑わされず、冷静な投資姿勢を維持したい。投資にも「忙中閑あり」である。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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小沼正則
メディアバンク株式会社
2013-07-29