米連邦議会は10月16日、国家財政をめぐる協議で合意し、米国の債務不履行(デフォルト)は回避された。合意の可能性は数日前から高まっていたとはいえ、世界経済に重大な打撃を与える事態は避けられ、「一安心」というところである。

以降を占う上で、与野党の合意内容を整理してみよう。

■合意は暫定的なもの
デフォルトという破壊的な事態は避けられた。だが、対立の原因であった暫定予算、国債発行の上限引き上げで合意できたわけではない。合意内容は、以下の通り。

・政府の借り入れ権限を2月7日まで認める
・政府の支出を現行水準で維持する
・財政赤字削減策をまとめる、上下両院の超党派委員会を設置する
・医療保険制度改革(オバマケア)の微調整
・政府機関閉鎖で賃金を受け取れなかった職員に未払い分を支払う


要するに、今回のようなデフォルトに直面する事態は2月以降に延ばされたことになる。新たに設置される超党派委員会は、12月中旬をメドに財政再建策を協議することになる。

問題の「解決」ではなく、実質的には「先送り」である。

■与野党は一致できるのか
今後の焦点は、超党派委員会に移る。だが、この委員会が財政再建策で合意できる可能性は高くないと思われる。

共和党のもくろみは、財政支出につながるオバマケア自身を廃止、年金など社会保障制度の改革を進めることだ。つまり「歳出削減による財政再建」である。今回の合意も、時間をおくことでこの制度の問題点をハッキリさせるという狙いが込められている。対する民主党は、富裕層に対する増税を唱えている。「歳入増加による財政再建」だ。

はた目には適度に組み合わせればよいと思うのだが、意見の隔たりが大きい上、共和党の支持団体である「茶会党」の強硬姿勢もあり、なかなか難しいのが実態だ。つまり、12月中旬以降には政局が再度緊張し、1月には今回の様な事態が繰り返される可能性が高いということになる。

■「決められない政治」のリスク
まさに米国版「決められない政治」だ。来年秋の中間選挙では共和党が勝ちそう(選挙区の区割りが共和党有利に改正された)なので、下手をすると、「決められない政治」は次期大統領選(2016年)後まで続く可能性がある。

世界の大国である米国がこの体たらくでは、財政問題の「期限」がくるたびに世界は心配し続けなければならない。下手をすると、米国のみならず、諸国の中に「経済危機に対応する上で、民主主義は非効率」という世論が高まりかねない。トップの権限が強いロシアや、一党独裁の中国などには好都合だろう。

むろん、民主主義制度自身がなくなることはないだろうが、「安定した政治」を求めて、何らかの政治改革の気運が強まる可能性がある。米国の事態は、それほどに世界に対する影響が大きいということだ。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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