日本電産<6594>の業績が大きく改善している。10月22日に発表された決算によれば、4~9期は純利益271億円(前期比3%増)、2014年3月期の通期純利益は従来予想を引き上げて約550億円(同約6.8倍)となる見通し。
背景は、電動パワステ用モーターなどの自動車向けや家電向けモーターが好調に推移したこと。主力のHDD(ハードディスク駆動装置)は減益となったが、為替差損が減ったために補えた。やや大局的には、自動車の高機能化や、スマートフォン(高機能携帯電話、スマホ)とタブレット端末の世界的普及の恩恵を受けているということになる。
永守会長は、年間配当を90円(前期比5円増)とするのに加え、来春に従業員給与のベースアップを行う方針も示している。
今後は、米アップルが9月に発売したスマホ「iPhone 5s」、11月に発売される新型タブレット「iPad Air」向けの需要も期待できそうだ。
■HDD減速を車載モーターがカバー
すでに進行中だが、日本電産にとっては、中長期期にHDD用モーターから車載用への構造転換が急がれる。HDDはサーバやブルーレイ・レコーダーなどでの需要はありつつも、大市場であったパソコン市場が減速、とくにノート製品はSSD(ソリッドステートドライブ)に取って代わられつつあるからだ。同じく、デジタルカメラやゲーム機も市場が成熟傾向にあり、機能面では、スマホやタブレット端末に取って代わられつつある面がある。
半面、車載用は新興国での需要拡大に加え、油圧部品からの電動モーターへの置き換えが進みつつあり、今後も伸びが期待できる。日本電産では、2015年3月期に車載用を中心とするなど一般モーターの売上高が、HDD向けなど精密小型モーターを超える見通しだが、ぜひ前倒しで達成したいところだ。
そのため、「お得意」ともいえるM&A(合併・買収)を中心とする積極的な経営姿勢を継続・強化している。今期の好調も、車載事業を強化すべく、前期に海外3社を買収・子会社化したことが功を奏している。
■子会社群も健闘
子会社の日本電産サンキョーは、昨年、韓国の家電用ユニットメーカーのSCDを子会社化、家電・住設分野を強化しているところだ。最近も、ステッピングモーターなどが主力製品である、三菱マテリアル<5711>の自動車用モーター子会社(三菱マテリアルシーエムアイ)を買収することで合意した。三菱マテリアルシーエムアイはモーター事業と電気接点事業に携わり、デンソー<6902>など自動車部品メーカーとの取引で実績がある。
この買収で、日本電産の車載用モーターの売上高は約2割増加する。しかも、日本電産の事業との重複もほとんどない上、市場参入に時間がかかる自動車市場では「時間を買う」効果は大きい。電気接点事業でも、三菱マテリアルシーエムアイは車載用リレー市場に強い上、巨大市場である中国に生産拠点を有するという利点がある。
また、10月1日に日本電産コパル電子<6883>と日本電産トーソク、日本電産セイミツを完全子会社化、重複事業を解消して経営効率を上げる。
その日本電産トーソクは、本田技研工業<7267>向け新型CVT(連続可変トランスミッション)用コントロールバルブの生産・供給を始めた。ホンダへの部品供給は初めてで、ベトナムの生産拠点で生産する。こちらも、車載事業を着々と前進させている証左といえよう。
■株価は史上最高値奪回へ始動!
カリスマ永守社長のバイタリティは依然として健在だ。「攻めの経営」を貫き、成長を続ける日本電産の勢いは、しばらく止まりそうにない。もちろん株価も堅調に推移し、年初来の高値を連日で更新。史上最高値は2006年1月に付けた1万1380円だが、いよいよこの奪回が射程圏に入ってきた。いずれは奪回の可能性が高く、ここは押し目買い方針を堅持したい。
(小沼正則)
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