10月30日のニューヨークダウ工業平均の30日終値は、15618.76となった。当日のFOMC(米連邦公開市場委員会)声明に大きな変化がなかったため、一時、株価が下落したが、やや持ち直した。

それにしても、年初の13000前後からは大きく上昇している。だが、株価と実体経済の関係を見ると、実に不可思議な傾向が見て取れるのだ。


■雇用状況はさほどでもないのに……
民間調査機関が発表した10月の全米雇用報告では、米国の民間部門雇用者数は13万人増加、通信会社ロイターの調査では15万人増加した。伸びてはいるが4か月連続で鈍化傾向で、4月以来の小幅増となっている。政府による非農業部門雇用者数は11月8日に発表されるが、約10万人の増加にとどまるという観測も出ている。

そもそも米国は移民国家で、毎月10~15万人が流入している。このため、流入数以上に雇用が増加しない限り、実質的に雇用は減っているということになり、それは景気の悪化もしくは横ばいを意味する。

最大の理由は、10月初旬に16日間に及んだ政府機関の一部閉鎖だ。本来は一時閉鎖なのだが、これを機に職を失った人も数万人おり、それが全体の伸びを抑えた。

つまり、現在の米国の雇用事情はあまりかんばしくないということで、景気もさほどよいわけではないということになる。

■現状は典型的な「金融相場」?
景気がさほどよいわけでもないのに、なぜ株価は好調なのだろうか。景気が良くなり、企業の業績が上がってこそ、株価が上がるはずではないのか。

これは、米国の中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)が量的緩和政策を行っていることと関係している。FRBは毎月850億ドルの金融資産(国債や不動産担保証券)を買い取り、市場に資金を流している。この緩和策は、2008年のリーマン・ショックによる米国(それと世界)の大きな景気後退を機に、形を変え、金額を変えて、数度にわたって行われている。

金融機関はその潤沢な資金を使い、株式や投資信託への投資を行っている。それが株価を押し上げているのだ。つまり、景気回復が遅れる思われると金融緩和が継続され、その資金が株価を押し上げるという構図だ。

つまり「景気が悪いと株価が上がる」という、実に不可思議な状況ということになる。これは、現在の米国の株価が、実体経済の成長をベースにした企業の成長、それによる株高(業績相場)というよりは、金融緩和による株高(金融相場)の色彩が強いということを意味する。もちろん、株高はさまざまな形で企業経営に恩恵を与えるので、この2つは「白か黒か」というほどハッキリしたものではないのだが。

金融相場が業績相場に転化してこそ、本格的な景気回復と言える。現時点で投資を考える場合、ここの見極めが非常に大事になるわけだ。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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