プラント業界への注目が集まっている。世界経済の回復基調が鮮明になり、新興国の発展で各種プラント需要が高まっていることに加え、北米を中心にシェールガス、シェールオイルの開発にともなって、液化天然ガス(LNG)プラントなどの建設計画が相次いでいるからだ。
ここ数年、各社の利益率が低下する傾向も見られたが、韓国企業との価格競争は一段落しており、今後は安定的に推移することが期待できる。専業、主要3社の最近の動向を見てみよう。
■新規事業も注目される千代田化工建設
千代建<6366>は、世界初の大型水素発電所(出力9万キロワット)を含む、水素の輸入・供給基地を川崎市に建設するプロジェクトに参画する。水素をガスに混ぜて燃やすもので、既存の天然ガス火力発電所の設備を利用できる。因みに水素は熱量がガスの2倍以上で、この発電方法は、エネルギーコストの劇的低下に貢献するものとして注目されている。同社がこのプロジェクトに参加することになったのは、水素有機溶剤に溶かして常温輸送するという、大量輸送・安定供給の技術を有するからで、今後の同社のエネルギー事業の核となることが期待されている。
再生可能エネルギー施設の建設にも、積極的に乗り出している。昭和シェル石油<5002>子会社との連携で、国内で18件、能力8.6万キロワットのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設を、三井物産<8031>などから受注した。
既存事業では西アフリカのガボンで海底油田の開発事業に参画することを発表。引き続き、資源開発事業も強化する方針だ。
■史上最高益を更新する日揮
日揮<1963>の2014年3月期の純利益は3期連続で最高となる予想だ。需要拡大に備えるため、来年初旬にも北米拠点を拡充させる予定。有望な市場であるロシアでも、西シベリアのLNGプラントの設計などを受注している。プラント事業への「種まき」として、IHI<7013>などと共同でブラジルの造船所に出資することも行っている。今後は、こうした投融資も増やす戦略だ。
コスト上昇を抑えるために、プラントの建設場所ではないヤードで、モジュールにしてから大型船で運ぶ「モジュール工法」に磨きを掛けている。自然環境が厳しい場所、人件費が高く労働時間を短縮したい国での建設に適した工法で、すでにオーストラリアやロシアでのLNGプラント建設に導入されている。こうした努力に加え、人材育成投資によって従業員1人当たりの利益額を増やす。
■ロシアの発電所受注で波に乗る東洋エンジニアリング
東洋エンジニアリング<6330>は、伊藤忠<8001>と共同で、ロシアの電力会社から大型ガス火力発電所の建設を受注。日本企業としては、ロシアの発電設備で過去最大規模の受注となる。
同社は、とくに北米・南米での事業を重視。カナダ中西部アルバータ州のオイルサンド開発鉱区で、生産設備の工事業務なども受注したほか、ブラジルでも、リオデジャネイロ沖での油田開発のための洋上石油生産・貯蔵・積み出し設備(FPSO)を受注した。このブラジルでの事業は、現地企業との合弁によって「地元企業」と認定されての案件。ブラジルのペトロブラスは、2020年までに原油・ガスの生産量を現在の倍以上に引き上げる計画だが、他の新興国同様、ブラジルも国内企業を優遇する規制が残る。市場としても魅力のあるブラジルで「地元」認定を受けたことは、以降も事業を有利に展開できる材料といえよう。北米での受注も、今期は前期比3倍以上の500億円をめざしている。
■注目される各社の株価
世界には計画のあるLNGプラントだけで約20件、「シェール革命」などによる潜在案件はさらに潤沢といわれている。課題は採算管理力で、マネジメント力のいっそうの向上が欠かせない。2013年3月期、東洋エンジニアリングはインドネシアで不採算案件が相次ぎ、業績の下方修正を余儀なくされた。日揮の新工法はこうしたリスクに対する対策のひとつだが、採算管理の強化は共通の課題だ。
史上最高値圏にある日揮、2006年の高値からははるか下方にあるもの回復基調が鮮明な千代健、なかなか回復基調に戻れない東洋エンジと、現状の業績を反映したそれぞれの株価位置にあるが、各社とも中期的な展望は明るい。順張り、逆張りの差はあっても、いずれも押し目買いを堅持してみたい。
(小沼正則)
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