11月初旬、10月の雇用統計(非農業部門雇用者数)が20万人を超えたことで、連邦準備理事会(FRB)の行っている金融緩和の縮小(出口)がささやかれた。

だが14日、イエレン次期FRB議長(現副議長)の議会証言で、事実上、当面の「出口」が否定されたことで、市場はまたもリスクオンの動きとなり、ダウ工業株30種平均は最高値を更新した。年内の「出口」がないことは編集部としては予想通りで、雇用統計の結果で「動揺」しなかったことは正しかったと思っている。

それにしても、当面のFRBの金融対策をどう見ておくべきだろうか。FRBの政策は世界への影響が大きいだけに、しっかり理解しておきたいところだ。


■株高の効果とその背景
米国の株高は事実で、これは米国内の消費を押し上げる効果を生んでいる。だが、その株高がどのような原因によるものかと考えれば、主要な原因は、FRBの緩和政策(QE3、毎月850億ドルの米国債と不動産担保証券を買い取るもの)にともなう資金供給である。国債や証券をFRBに売却した金融機関は、代金として受け取ったマネーを使い、株式などへの投資を進め、それが株高の原因となっているのだ。米国は、株式や投資信託を保有する世帯が、全体の約半数にも及ぶ。株高が消費に与える影響は、日本以上に大きい。

現在、米国では財政赤字の解決をめぐる議会内の対立を解くメドはない。10月のような政府機関の閉鎖になれば、経済には悪影響を与えかねない状況である。だから、米政府、FRBとしては、景気を冷え込ませる政策を行うわけにはいかない。「出口」に進めば株高にストップがかかる可能性があり、FRBとしては選びにくい選択肢なのだ。

むろん、米経済の成長が自律的になっていれば、「出口」に進める。自律的とは、消費者が賃金が上がり、雇用が増え、ものを買うようになって企業の業績が上がり、さらに設備投資が増えて雇用が増え……という循環が生まれることである。米政府やFRBは、米経済がまだこの段階には達していないと判断しているわけだ。

金融緩和が株高を後押ししているのは事実でも、それを持続させるのには限界がある。自律的成長、企業業績の向上がない株高は「バブル」だからだ。著名投資家のカール・アイカーン氏も「現在の株高には企業収益の裏付けが乏しい」という趣旨の発言をしている。だからこそFRBは、金融緩和を続けることで早期に経済を回復させたいと考えているのである。

■イエレン氏は金融監督強化する方向?
ところが、イエレン氏指名のための議会証言で主要な議題になったのは、金融機関への監視と安定化の問題だった。現在、金融商品の販売をめぐり、米司法省とJPモルガンが巨額の和解金の支払いで合意するなど、金融機関への風当たりは強い。これを反映し、議員は金融監督に関する質問を行ったということだ。

イエレン氏は、現在は廃止されている、金融監督問題でのFRB定期会合を復活させることに前向きな発言を行った。併せて、再度の危機の際、金融機関に対する公的資金の投入にも余地を持たせた。FRBは、金融システムのリスクが拡大することを防ぐ責任がある(マクロプルーデンス政策)。

イエレン氏は、「金融政策と同じように監督業務を真剣に受け止め、同様の時間と注意を注ぐ必要がある」とし、監督機能の強化に前向きな発言を行った。ただ、巨大銀行の分割案を唱える意見もあるなど、監督のレベルについては、FRB内でも幅がある。イエレン体制の下では、バーナンキ時代(現在)よりも監督規制は強まりそうだが、その詳細が明らかになるのは、就任後のことになりそうだ。

■やはり「出口」はそう近くない
イエレン氏は、「景気回復の基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、経済がふらついた際に利用可能な金融政策手段が限られている局面では、とくに景気の支えを取り除かないことが大事だ」とし、「緩和の解除もしくは十分な緩和を提供しない(「出口」のこと)代償は高くつきかねない」とも述べている。この発言を見るに、遠くない将来に「出口」に踏み出すことは確実ではあるものの、急いではいない(急げない)ことは明らかだ。

では、現在行っている量的緩和を拡大するか期間を延ばすことはあり得るだろうか。編集部としては、その可能性は高くはないが、「ある」と考える。ただ、これ以上の国債や不動産担保証券の購入拡大は、それらの市場の中でのFRBの位置を異常に高めることになる。資産購入の拡大は「市場をゆがめている」との批判を受けかねない。

だから、FRBが取りうる金融政策の選択肢は、なかなかに悩ましいことになる。それでも、編集部は早期の「出口」はないと考える。ゆえに、米国の株高はもうしばらく続くだろう。投資の際の参考にしてほしい。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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