家電量販店業界は、2011年の地上デジタル放送への完全移行、いわゆる「地デジバブル」の崩壊後、エコポイントの終了も相まって厳しい販売不振が続いた。「次の収益の柱」と期待したスマートフォン(高機能携帯電話)も、携帯電話会社の販売代理店にシェアを奪われている。
だがここに来て、業績に底入れ感が強まってきた。主要3社を取り上げた。
■再建に乗り出すヤマダ電機
ヤマダ電機<9831>は、2013年3月期に2期連続減収減益となり、創業者の山田会長が社長に復帰、取締役全員を一段階降格させ、再建に乗り出した。2013年4月~9月期業績は41億円の最終赤字となったが、「アマゾン」などインターネット通販との対抗を意識するあまり、過度の価格引き下げで粗利益率が悪化したことが理由。だが、これは販売体制を修正済みで、すでに復調の気配は見えてきている。
業績の柱に育てようとしているのが、住宅部門。連結子会社のヤマダ・エスバイエルホーム<1919>を中心に宅地建物取引主任者(宅建)の有資格者を大量採用、家電店舗にも住宅関連コーナーを設けてテコ入れを強化している。埼玉県新座市の新店では、住宅関連の売り場は全体の約2割を占め、リフォームや太陽光発電システムなどにも対応する。当面、住宅関連の売場を備える店舗を200店程に拡充させ、15/3期には住宅部門の売上高構成比を15%に引き上げる計画だ。むろん、住宅と抱き合わせでの家電製品の売上増も見込める。
買収したベスト電器<8175>とは、東南アジア事業でも協力を強化する計画だ。中国での事業は、不振の南京店(南京市)と天津店(天津市)を閉鎖、瀋陽店(遼寧省)を改装などでテコ入れした上で、再度の店舗増加を見越す。
■ケーズ、ビックカメラの動向
ケーズデンキ(ケーズHD<8282>)は、2013年4月~9月期の経常利益が104億円(前年同期比7%減)。エアコンの売り上げは好調だったが、店舗の多い東北地方の悪天候で客足が鈍ったことと、薄型テレビの売り上げが予想を下回ったことが響き、増益予想から減益となった。
ただ、ヨドバシカメラ(非上場)と並んで顧客満足度が高いのが同社の強み。業界のインターネット販売との競合は激しいが、接客での差別化で、粗利率を一定維持できている。
ビックカメラ<3048>の2013年8月期業績は、買収したコジマ<7513>を取り込んで、売上高が8000億円台に急増、2014年8月期も増収を見込む。これにより、売上高で業界4位からヤマダ電機に次ぐ2位に浮上した。製品では、夏場は猛暑がエアコンの売上を押し上げ、音響映像機器も6月には対前年比でプラスになった。
コジマとの共同仕入れで、さらなる効率アップを進めるのに加え、ビックカメラのノウハウを取り入れた新ブランド店「コジマxビックカメラ(KxB)」を40~50店(現状の4~5倍)に増やす計画だ。コジマでは扱っていなかった自転車やオモチャなども揃え、売上増加を狙う。
■注目される株価動向
家電量販店の懸念材料は、来年4月の消費税増税。とはいえ、それ以前には一定の「駆け込み需要」も期待できるし、来年早々にはソチでの冬季オリンピック、6月にはブラジルでのサッカー・ワールカップと、国際的イベントが目白押しで、追い風が期待できる。製品に依存する面もあるとはいえ、薄型テレビ需要も底打ち気味で、今後は、より高精細な4Kモデルを中心に大画面製品への買換需要も起きる。
活力を取り戻してきた家電量販店の今後は、期待大である。中でも営業赤字となり、大きく売られたヤマダ電機はカリスマ経営者が復活したこともあり、中期的な株価妙味は大きい。この安値は絶好の仕込み場といえるだろう。
(小沼正則)
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