粉飾決算で多大なダメージを受けたオリンパス<7733>に、復活の道筋が見えてきた。
2013年4~9月期最終損益は79億円の赤字で、2014年3月期純利益は130億円(前期比62.1%増)に下方修正したが、これは損害賠償訴訟に伴う特別損失を170億円計上したため。この修正発表後、テルモ<4543>との和解による訴訟解決が発表された。オリンパスにとっては、内外の投資家から提起された20件以上、総額520億円もの訴訟がリスク要因だったが、今回の措置で大部分を引き当て計上し、解決にメドが立ったことになる。併せて、内視鏡の生産能力を増強するという報道があったことで、「底打ち」感が強まっている。自己資本比率も、30%弱にまで回復してきた。
世界シェアの7割以上を占める内視鏡を中心とする医療部門は、オリンパスの競争力の源泉。この上半期は内視鏡の新製品が好調で、同部門は上半期として過去最高の営業利益となっている。
前述した内視鏡の生産力増強では、福島県の2か所と青森県の工場に新棟を建設して対応する。また、新興国での需要拡大に備えるべく、インドで医療関係者向けの施設開設も準備中だ。この種のセンターは中国・上海、広州にも開設済みだが、受注のためのインフラを整える狙いからのものだ。新興国市場では、年2割以上の成長をめざす。
■デジカメは苦戦
他方、デジタルカメラは価格下落が著しく、この部門は4期連続の赤字が確実だ。すでに、5つの製造拠点を2カ所に集約、機種絞り込み、ミラーレス一眼への経営資源集中などの構造改革を進めつつある。筆頭株主であるソニー<6758>とは、すでにレンズやセンサーを相互供給しているが、もう一歩進め、部品共通化や物流の統合も検討し、コスト削減で2015年3月期の黒字転換をめざす。
ただ、コンパクトサイズの製品は高性能カメラを搭載したスマートフォン(スマホ)に食われるなど、デジカメ事業の環境はなかなかに厳しい。このままではじり貧も考えられ、もう一段の生産縮小もありそうだ。オリンパスにとって、デジカメ事業は、画像技術を内視鏡に転用する意味合いもあり、部門単独の収益だけでは測れない効果もある。それだけに、マーケティングの工夫も含め、黒字化が最低限だ。
明るい材料もある。最新製品の、プロ/セミプロ向けミラーレス一眼「OM-D E-M1」は、発売前から予約が殺到、交換用のレンズキットも生産が追いつかないほどの人気になっている。コンパクト型では、11月末に最上位機種として「スタイラス・ワン」を発売したが、ファインダは「OM-D E-M1」と同等のものだけに、ヒット製品にできるかどうかは、カメラ事業の今後を占いそうだ。
また、同じく、国内外で高いシェアを誇るICレコーダーでは、Wi-Fi(無線ネットワーク)機能を内蔵し、スマホからの操作やファイル転送機能のある「ボイス・トレックDS-901」を発売する。スマホで撮影した画像を、音声ファイルに関連づけることもできる。オリンパス製品は機能の豊富さで定評があるが、この地位はさらに盤石になりそうだ。
■今後の株価動向に注目
政府が6月に打ち出した「日本再興戦略」では、医療分野がコアのひとつとして位置付けられている。オリンパスには、ソニーとともに高精細映像規格「4K」や3Dなどを使った新商品の開発も進めることが期待されている。医療分野を中心に、オリンパスが役割を果たすことを期待したい。
中間決算を機に株価は戻り歩調となり、年初来の高値に迫ってきた。業績の改善が進んでおり、4,000円前後での活躍に期待かかる。押し目買いで対処したい。
(小沼正則)
※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。
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