11月23日、中国が日本の尖閣諸島を含む空域に設定した「防空識別圏」。前回の記事以降も、動きは急激だ。

前回の記事で、編集部が「可能性が高いとは思っていない」としつつ指摘したのが、防空識別圏問題は「米中が示し合わせた」という説。以降、明らかになった事実を踏まえると、この可能性は高くなっているように思える。

引き続き、この問題を追ってみよう。


  

■安倍首相も驚く、米国の裏切り
中国の防空識別圏設定の2日後、米軍は核兵器を搭載できる戦略爆撃機B-52を、中国への事前通告なしに飛行させた。

まず、この爆撃機は16日、つまり、中国による防空識別圏設定前にグアムを出発していた。仮に、中国が米国に事前に伝えておらず、米軍が「B-52が近隣にいるから飛ばしてみよう」と考えたとすれば、「偶然」とは恐ろしい。しかも、爆撃機は戦闘機の護衛なしには飛行しないのがふつうだが、今回はそれがなかった。途中まで護衛機が付いていて、中国の対応を見て引き返したとすれば、その護衛機はどこに行ったのか。

中国を過度に刺激することを避けたという意味かもしれないが、どうも話ができすぎているとはいえないか。これが第一点だ。

次に、米国は軍用機の飛行は従来通り(つまり中国の設定した防空識別圏を考慮せずに)行っている一方で、29日には民間航空会社に、中国への飛行計画提出を促していること。「安全優先」とか、いろいろ言われているが、米国が「軍と民間は別」という態度を取るのは珍しい。

日本政府は、わざわざ航空会社に対し、中国に飛行計画書を提出しないように求め、業界団体も「安全が確保できるから」(根拠は不明)と提出しないことにしているのに、同盟国の米国は「抜け駆け」、ある意味で裏切ったわけだ。

安倍政権が驚くのも無理はない。報道によれば、日本政府は米国の態度について事前に知らされていなかったらしい。元外交官で評論家の岡本行夫氏も、NHKのインタビューに応じて「日本の安全保障が直接かかわった問題で、米国が日本の利益を損なう形で、外に見える形で行動を取ったことは記憶にない」と述べている。

しかも、来日したバイデン副大統領は、「(防空識別圏設定を)黙認しない」とは言ったが、「中国に撤回を求める」とは言わなかった。外交用語では、「言うだけで行動しない」ということを意味しており、会談前に「撤回を求める」としていた安倍首相は、すっかり肩すかしを食らわされた。

日本政府の困惑ぶりもうかがい知れる。習近平国家主席からすれば「してやったり」であろう。

■米国の長期の政策とは即断できない
なぜ、米国はかくも中国に甘い態度を取るのか。恐らく、米国内で財政問題に関する与野党の対立が解消する気配がないこと、核開発をめぐるイランとの交渉の先行きが不安であることなどが影響し、米国が「中国にかかわる余裕がない」というところではないか。

だから、米国に余裕ができれば、「黙認しない」から「撤回を求める」に態度を進めることもあり得るわけだ。安倍政権もそれを見越して、平静な態度を取っているのだろう。

問題は、財政問題やイラン問題が「落ち着く」のかどうかということだ。とくに財政問題は深刻で、年内が期限となっていた与野党の合意は、現状ではほとんど見込みがない。米国の財政問題は、アジア情勢に影響するほどに「世界の難問」ということだろう。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

■電子書籍好評発売中(AmazonよりKindle版
あのファーストリテイリング(ユニクロ)を真っ先に推奨したこ
とで知られる“銘柄発掘のカリスマ”小沼正則の投資・ビジネ
ス塾が電子書籍になりました。第一弾は、最新情報と投資へ
のノウハウを読みやすくまとめ、初心者にもわかりやすくな
っています。スマホやタブレットでいつでも手軽に読めます。
まもなく第二弾、第三弾が登場しますのでご期待ください。


ITライフハック
ITライフハック Twitter
ITライフハック Facebook

ビジネス塾に関連した記事を読む
大復活の道を歩むオリンパス! 注目銘柄を斬る
防空識別圏問題は中国の「勇み足」?それとも「米中合作」?
回復に向かう家電量販店!ヤマダ電機の復活 注目銘柄を斬る
イエレン氏の議会証言に見る 「出口」は先で監督は強まる?
回復するソフトウェア業界 注目銘柄を斬る