1月末になって新興諸国経済に関するリスクが拡大、アジア各国をはじめ、東京市場でも株価が下落、その後も神経質な動きが続いている。
発端は、23日にアルゼンチンの通貨ペソが対ドル相場で急落する「アルゼンチン・ショック」だ。いったい何が起こっているのだろうか。
■アルゼンチン経済の現状
アルゼンチンは1990年代に年10%近い経済成長を実現したが、1997年にタイから始まった「アジア通貨危機」が波及、隣国ブラジルが通貨を切り下げたことで輸出競争力を失い、国際収支が悪化した。
2001年11月には、対外債務の返済不履行(デフォルト)、つまり国家破たんに追い込まれた。以降、通貨を変動相場制に移行することで輸出が拡大、中南米諸国や中国との経済関係が強化されたこともあり、アルゼンチン経済は持ち直していた。
ところが1月23日、ブエノスアイレス市場でアルゼンチンの通貨ペソが前日比で12%も急落した。同国の外貨準備が急速に減少、中央銀行による「ペソ買い」が不可能になるのではないかという観測が広がった。この前日もペソは下落していたが、中銀は介入しなかったためだ。アルゼンチンの外貨準備高は305億ドル(約3兆1500億円、2013年末時点)で、1年で約30%も減っていた。外貨準備が枯渇すると、再度のデフォルトとなる可能性があるためだ。
■背景は米国の「出口」
なぜアルゼンチンの外貨準備が減少し続けているのだろうか。
理由の一つは、主要な貿易相手国である隣国ブラジルと欧州諸国、中国が揃って景気後退に陥り、アルゼンチンからの輸出が減ったことである。とくに、主要輸出品である大豆や小麦などの農作物輸出が伸び悩んでいることが大きい。
もう一つは、米国が1月から金融緩和の縮小(出口)を開始したことで、世界的に、新興国に流れ込んでいた資金が米国に逆流していることである。資金流出で通貨は下落、中央銀行が為替相場を維持すべく介入(ペソ買い・ドル売り)を続けたことで、外貨準備が減少したのだ。アルゼンチン政府は資本流出を防ぐべく、外国企業の電子商取引での買い物への課税を強化するなどの措置を取ったが、すぐに規制を緩めた。こうした政策上の迷走も、投資資金の流出を招く一因である。
アルゼンチンの先行きは余談を許さない。ただ、仮に再度のデフォルトとなっても、国際的な影響はそう大きくはない。なぜなら、アルゼンチンは2000年代のデフォルト時の対外債務を完済してはおらず、国際金融市場から実質的に締め出された状態だからだ。それにしても、国民は貧富の格差が広がって苦しむことになろう。
アルゼンチン政府自身が一貫性のある経済政策を行う必要があるのはもちろんだが、米国にも「出口」政策を慎重に進めてほしいところである。
(編集部)
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2013-06-07