オーストラリアのシドニー20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が行われる。

最大の懸案は、世界経済のリスクとして浮上している新興国からの資金流出問題だ。昨年5月に米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が金融緩和の縮小(テーパリング)を示唆して以来、経常収支が赤字の新興国からの資金流出が続いてきた。1月からはテーパリングが本格的に実施され、アルゼンチンは通貨急落に見舞われた。

G20の見どころは何だろうか。




■資金流出の「犯人」は?
ある証券会社の調べによると、新興国の株式から流出した資金は、この1月から193億ドル(約2兆円)に達しているという。これは昨年1年分を上回る規模で、とくにインドやブラジルなどからの流出が目立っている。

資金が過度に流出すれば、その国は通貨安、輸入インフレ、金融不安や景気後退に襲われる。

米国では、新興国からの資金流出をめぐる「犯人捜し」がさかんだ。著名な経済学者であるクルーグマン・プリンストン大学教授(ノーベル経済学賞受賞者)は「先進国の金融緩和で新興国の資産が上昇し、それが崩れたこと」が原因だとしている。「犯人=先進国」説である。苦境にある新興諸国はクルーグマン氏の説を歓迎している。

これに対し、新興国経済のぜい弱さや不透明な経済構造こそが原因だとする意見、つまり「犯人=新興国」説もある。ロドリック・プリンストン高等研究所教授の意見がそれだ。

米政府の公式見解は後者で、新興国に対して投資の自由化や国有企業の民営化といった構造改革を要求している。

次のG20では、この2つの異なる立場が「激突」する場になる。

■あまり説得力がない米国の立場
就任前は「ハト派」、すなわち金融緩和の継続派とみられたイエレンFRB新議長だが、テーパリングの基調を維持する構えだ。先週、初めて行った議会証言では、議長は、新興国経済の動向を気にしないかのような発言を行った。

だが、この姿勢は歴史的に見てあまり説得力がない。

なぜなら、米国の「犯人=新興国」説は1990年代のアジア通貨危機の際にも言われたもので、この通りに経済構造改革を進めたインドネシアや韓国は、経済が大きく混乱した実際がある。逆に、米国からの改革要求を拒否したマレーシアは、漸進的な改革を成功させた。

マレーシアの態度は、当時は米欧から大きな批判を受けたが、2000年代になると、「それはそれであり得る政策」として認知されるようになった。これは、国家統制の下で成長を続けてきた中国という「お手本」が登場したからでもある。

しかも、新興国からすれば「改革の必要性があるとしても、それを知った上で投資したのではないか?」と、先進国の投資家に言いたいことだろう。インドやブラジルは米国によるテーパリングに強い不満を表明しているのは、以上のような事情からだ。

何にしても、FRBの行動は世界経済に巨大な影響を与える。自国経済の事情を最優先したい米国の都合は分かるとしても、世界経済に対する「責任」を忘れるべきではない。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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