建設業界にようやく明るさが戻ってきた。背景は、2014年度予算案での公共事業費が前年比12.9%増の約6兆円となるなど、東日本大震災からの復興や「国土強靱化」が進ちょくしていることと、首都圏を中心として大型オフィスビルの建設が進んでいることだ。消費税の駆け込み需要も後押ししている。

大手はもちろんだが、中堅を含む22社の2014年3月期第3四半期累計(12年4-12月)を見ると、単体での通期受注達成率は大手4社が88.2%に対し、中堅17社は93.8%と、むしろ中堅の方が好調だ(合併した安藤ハザマ<1719>を除く)。事業別では、土木事業よりも建設事業の方が達成率が高い。工事粗利率も、大手が減少傾向であるのに対し、中堅は一部を除いて改善している。

各社の動向を追ってみた。




■中堅建設各社の動向
昨年4月に新会社を発足させた安藤ハザマは、2014年3月期通期の営業益を従来予想70億円から101億円と大幅に上方修正した。第3四半期の受注高、とくに建築事業のそれが前年同期比で2.5倍に増加したことが大きな原因だ。

最近受注した業務には、リゾートホテル「エクシブ鳥羽別邸(仮称)」(三重県鳥羽市)、パチンコメーカー大手・ニューギンの東京ビルなどがある。

西松建設<1820>は、すでに第3四半期で2014年3月期の経常利益進ちょく率が151.4%と上回った。ただし、第4四半期は赤字化を予想、通期計画は据え置いた。

面白い動きとしては、玉川大学との産学連携で蓄積した植物工場技術をベースに、独自のモデルプラントを神奈川県相模原市に開設する計画だ。リーフレタスを生産・収穫できる完全人工光型プラント、システム販売に乗り出す。

海外進出では、新市場として注目されるミャンマーに営業所を開設、同国のインフラ整備をはじめ、東南アジア全域に進出先を広げる構えだ。

戸田建設<1860>も、通期計画の経常利益60億円に対して、進ちょく率は144.1%と上回った。受注した業務としては、三菱UFJリースなどと共同で、長崎市でメガソーラー発電事業に参画している。営業運転開始は2015年4月の予定。世界貿易機関(WTO)適用対象である、西日本高速道路四国支社の高松自動車道大坂トンネル南工事も受注した。東京の豊洲新市場(仮称)水産仲卸売場棟ほか建設工事の一部にも参加する。

五洋建設<1893>はこの第3四半期、77.4%増と、全ゼネコン中でもっとも受注高が増えた。通期経常利益は17.3%上方修正し、増益率は14.3%増から34.2%増へと拡大する見通し。

こちらも、シンガポールの鉄道トンネルを受注したほか、ミャンマーの工業団地開発の一部を請け負うことが決まった。また、WTO対象である東日本高速道路北海道支社の、北海道横断自動車道忍路工事を受注している。

■株価は上昇第2ラウンドへ!
建設業界にとっては、2020年の東京オリンピックにおけるインフラ整備で計画される約4500億円の予算、さらに新興国のインフラ整備で大きな恩恵が期待できる。

人手不足による人件費の高騰と円安による資材費上昇は懸念材料で、自治体の発注工事への入札への参加をためらう「入札不調」なども相次いでいる。しかし、建設投資額の大幅増加は発注者とゼネコンの力関係を逆転させており、工事単価の伸びが収益を下支えすることは確実だ。

長期大型工事主体の大手ゼネコンも来期以降は収益の改善が見込まれが、当面は中堅ゼネコンの収益性が評価される局面が続こう。収益率改善の動きは急ピッチであり、低位に甘えていた株価も意外高となる可能性が高い。昨年の上昇が第1ラウンドだとすると、保ち合いから上放れを模索する現在は上昇第2ラウンドの序曲。ここでの押し目は絶好の買い場を提供しよう。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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