苦戦が続く日本の電機、デバイス関連企業の中で「勝ち組」といえるのが村田製作所<6981>だ。

近年、日本のデバイス関連企業は、半導体、液晶パネルなどの分野で国際競争に破れ、次々と市場からの撤退を余儀なくされてきた。その後は、センサーやコンデンサなどで優位性を発揮しているものの、実際は「アップル関連銘柄」といわれるほど、米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone」とタブレット端末「iPad」に依存していた。

だが、そのアップル製品は、韓国サムスン電子や中国企業の激しい追い上げにあい、シェアは徐々に低下している。一昨年発売した「iPhone 5」は予想よりも売れず、減産報道によって市場関係者に衝撃が走り、関連銘柄は大きく下落した。



こうした中でも、村田製作所は順調に業績を伸ばした。その秘密は、サムスン電子からの需要でしのぐことができたからである。最近は、格安スマホを販売する中国企業も着実に取引先に加えている。「オンリーワン」の技術競争力によって、リスク分散に成功したといえよう。

■村田の強みは機動性
IT(情報技術)業界は浮沈が激しく、「覇者」は数年で入れ替わる。スマホが主流のIT製品も、今後は眼鏡や時計型のウェアラブル(装着型)端末へと移行することが確実だ。

村田製作所は、顧客からの注文を待つだけではなく、情報収集によって有望企業を積極的に発掘している。むろん、技術優位があるゆえの戦略だ。同社は主力製品の積層セラミックコンデンサで優位を維持し、世界シェアは約35%、年間生産量は1兆個にも達する。世界的には高速通信「LTE」向けの部品の需要拡大が見込まれる。LTE対応端末は従来製品よりも部品数が多いことも利点だ。

さらに、2012年には世界最小のコンデンサを開発、次世代IT製品での採用が期待されている。最近では、消費電流が小さい静電容量型のMEMS(機械要素部品)気圧センサーを開発、ヘルスケア機器や気象データシステム向けの需要が期待できる。

また直近では、世界初の3次元検知センサーの量産を始める計画が明らかになった。これは、NEC<6701>から買い取った事業と工場を使って生産するもので、1個のセンサーであらゆる方角の磁界の動きをつかむことができる。量産は4月以降となる予定だ。

東北大学との共同では、デジタルテレビ放送の空き周波数帯域(ホワイトスペース)を状況に応じて自動選択し、無線通信するワンチップ可変SAW(表面弾性波)フィルタの開発に成功した。

■自動車、産業向けにも強み
また同社の強みはハイテク部門以外にも、自動車や産業向けにも競争力を有していることが挙げられる。これは、経営上のリスク分散にもつながっている。この角度からも、すでに発表されている東光へのTOB(株式公開買い付け)も注目できよう。同社は電源用コイルに強く、新製品開発などでのシナジー効果が期待できる。

このほか、電磁波解析などに使えるCAE(コンピュータ利用エンジニアリング)用解析ソフトウエアを北米などグローバルに投入する計画もある。他社製品に比べて30分の1以下という激安価格で、国内では2008年に投入し好評を得ている。

村田製作所の手がける製品には、単価が1円にも満たないものも数多い。それでも、世界のトップとなることで膨大な需要を享受できる。アップルだけでなく、サムスン電子の先行きにも不透明感がただよいつつあるが、村田製作所の地位は当面、揺るぎそうにない。

株価は1月に1万円の大台に乗せ、リーマン・ショック前の高値9350円(2007年7月)を抜いてきた。2001年から続いたボックス離脱の動きとも判断でき、大相場へと発展する可能性もある。ここは大いに注目してみたい。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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