2月末からのウクライナ情勢の緊張、さらにクリミアでの住民投票実施と米欧によるロシアへの制裁実施にともない、株式市場が軟調となっている。だが、米欧もロシアもこれ以上の緊張激化を望んではいないし、戦争のようなこともあり得ない。
ウクライナをめぐる情勢は遠からず膠着(こうちゃく)状態に移行するだろう。もともと、米国を中心に先進国経済は着実に回復しており、情勢の落ち着きにともなって、株式市場も上昇に向かうと思われる。今回は1月以降の調整で大きく値を崩したファンダメンタルズ良好な富士フイルムHD<4901>、クボタ<6326>主力2銘柄に注目してみたい。
■富士フイルムHD
富士フイルムHDの2014年3月期は、デジタルカメラの販売が減った分を医療事業と事務機、さらに円安による為替差益が埋め、底上げした。医療用情報システムや内視鏡、さらにカラー複合機などが引き続き好調で、今期も増加が期待できる。
今後は、アルツハイマー型認知症治療薬などの研究開発費を上積みするとともに、再生医療分野を強化する。昨年9月には、再生医療事業推進室・再生医療研究所を新たに設立した。また、グループ内で再生医療製品を手がけるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を実質子会社化する。政府が再生医療をめぐる早期承認制度の導入を検討、特許期間も最長25年に延長する方針であることにも後押しされ、製品開発と事業化を加速させる。中国でも、人工皮膚の培養受託を始める。提供された患者の細胞を人工皮膚に培養するもので、事業化は2015年の予定だ。中国は先端医療の承認が早い上、膨大な富裕層を中心に需要が見込めることが大きい。
また、医療システムへのビッグデータの活用を進める。静岡がんセンターと共同開発し、2012年に発売した「SYNAPSE Case Match」はその代表格で、医師がCT(コンピュータ断層撮影装置)画像を見て肺がんかどうかを判断することを支援する。
懸案のデジタルカメラもテコ入れを図る。ミラーレス一眼「FUJIFILM X-T1」は、標準ズームレンズが付属するプロ向けの機種で、すでにカメラ機器の展示会では話題になっており、巻き返しの武器として期待されている。
株価は1月高値3172円から調整となり、日足チャート上は下降トレンドへと転換。買い急ぐ必要はないが、医療分野の競争力を考えれば2600円台からは買い下がりが賢明と判断する。
■クボタ
クボタは、2014年3月期業績が前期比約60%増加が予想されている。米国市場の回復により、富裕層向けの芝刈り機や小型トラクターなどの販売が予想を大きく上回ったことが功を奏した。
今後も、アジアを中心に新興国の需要拡大が見込まれるため、インドネシアのジャワ州にある農機向けディーゼルエンジン工場を拡充する計画も進行中。主に水田用耕運機に搭載される横型ディーゼルエンジンを生産する計画で、2015年に年間12万台の生産をめざしている。インドネシアは世界第3位のコメ生産量を誇っており、同社にとっては重要な市場だ。タイの拠点を軸に、カンボジアやラオスにも現地子会社を設立した。
クボタにとって、アジアの稲作地で同社の重要な市場でありながら、政情不安が業績に影響していたタイでも非常事態宣言が解除され、情勢が落ち着きを見せてきているのは好材料だ。政府によるコメ買い取り融資が順調に進展すれば、業績の上積みも期待できる。
また、農作業用ウエアにも参入する。アウトドア用品のモンベルと協力し、耐久性とともに使い勝手を重視し、ファッション性もある雨具、エプロン、長靴などを販売する。
株価は1月高値1852円から3月14日には安値1311円まで急落。政情不安や、新興国経済への懸念が足を引っ張った格好だが、ここは売られ過ぎか。突っ込み買い好機と判断する。
(小沼正則)
※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。
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富士フイルム
2013-03-09