乗員・乗客239人を乗せたマレーシア航空370便が3月8日、失踪した。

現在のところ、目的地であった中国・北京とは正反対の、オーストラリア南西のインド洋上に墜落した可能性が高くなっている。

今回の事件からかいま見えるのは、単なる事故と人道的な捜索活動ではない。国際政治は、まさに「生き馬の目を抜く」ものなのである。




■各国が捜索に協力
マレーシアのヒシャムディン運輸相代理は3月26日、インド洋に120個以上の物体が浮かんでいるとし、行方不明の航空機である可能性が高いとした。行方不明後の対応をめぐっては、マレーシア国内の権力闘争との関連がささやかれるなど、同国の対処に批判が高まったこともあったが、とりあえず捜索は山を越えたようだ。

マレーシア航空機の捜索をめぐっては、11カ国、艦船42隻以上、航空機40以上が参加する大規模なものとなっている。乗客に日本人はいないが、安倍政権もマレーシア政府からの支援要請に応える形で航空自衛隊のC-130輸送機とP-3C哨戒機を派遣した。ちなみに、航空機事故に対して際して自衛隊が援助隊を派遣するのは初めてである。

不明機に152人の自国民が乗っていた中国も、揚陸艦など艦艇8隻を動員、人工衛星約10基も稼働させた。この規模は群を抜いており、中国は捜索活動で存在感を示した(最終的にはフランスの提供した情報が決め手になったようだが)。「自国民の救援に力を入れている」といえばそれまでだが、事態はそう単純ではない。

■南シナ海の領有権問題が背景
マレーシア航空機は最終的にはインド洋上で発見されたが、当初は南シナ海に墜落した可能性が高いとされていた。

南シナ海をめぐっては、その全域の領有を主張する中国と東南アジア諸国が対立する図式になっている。いわゆる、南沙諸島、西沙諸島問題である。捜索活動とはいえ、基本的には他国の領土・領海・領空に無断で侵入することはできない。中国が自国艦船を多く派遣したのは、南シナ海が自国領であることを周辺国に見せつけるためだ。最新鋭の艦船と航空機が投入されれば、格好の「軍事デモンストレーション」ともなる。

東南アジア諸国は中国の意図を知っているからこそ、警戒し、米国や日本にも捜索への参加を要請したのである。東南アジア諸国の捜索能力は限られているため、日米を引き込んで、中国をけん制することを狙ったのである。日本も米国も、それを知った上で参加した。

捜索・救援活動は、実際には軍事訓練でもあるのが実際である。東日本大震災の際、米軍が行った「トモダチ作戦」も同様だ。むろん、その意図はどうあれ、被災地・被災者にとってありがたい支援だったことは言うまでもないのだが。

国際政治は誠に冷徹なものなのである。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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