今年に入ってから、米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和(QE3)の縮小(テーパリング)を進めてきた。市場から購入している国債などの金融商品の額を毎月100億ドル規模で減らし、年内に買い取りをストップさせる方向だ。当初、月850億ドルだった購入額は、5月は450億ドルとなる。

従来、新興国に流れ込んでいた資金が、テーパリングによって先進国に戻るという「逆流」が起き、新興諸国は通貨安や輸入物価上昇などに直面した。

だがここへきて、その流れも落ち着いてきたようだ。



■景気回復の遅れで低金利が続く?
新興国からの資金流出が落ち着いてきたのは、資金が逆流する先である米欧経済の回復が遅れているからだ。とくに、米国の雇用状況は月ごとの「まだら模様」が続いている。加えて、ウクライナ問題等の地政学的リスクが浮上し、欧州経済を中心に影響を与えている。

これにより、FRBはテーパリングを続けるとしても、かなりの期間にわたって低金利を維持しそうな気配が浮上している。バーナンキ前FRB議長らは、インフレ目標の「2%」を超えても、FRBが金利を上げるとは限らないという趣旨の発言をしている。4月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨も、金利引き上げへの気配は伺えない。

テーパリングによる資金流出に怒りさえ示していた、インドやブラジル、南アフリカなどには朗報だろう。新興諸国にとってはむしろ、中国経済の先行きの方が心配だろう。

■株式市場には朗報だが…
低金利が続くことは、株式市場には朗報である。ただ、リスクもある。低金利が続けば、経済はどうしてもバブル的になる。すでにハイリスク金融商品の販売額が上昇しているし、世界のヘッジファンドの資産総額は、リーマン・ショック前を超えている。

問題は、日本への影響である。一般的には、米国の株高は日本市場にもよい影響を与えるだろう。ただ、米国の低金利は「円高要因」でもある。日銀は当面の金融緩和を否定しているが、国内の景気だけでなく、米国の金融政策との協調をしっかり行わないと、円高となって輸出企業の不振と株価の腰折れを招く恐れもある。

日銀の采配は、以前よりも微妙な段階に入ったといえるだろう。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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