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外資系・日経グローバル企業への転職を支援する人材紹介会社であるロバート・ウォルターズ・ジャパンは、世界28か国の採用トレンドと日本の業種・職種別採用・給与動向をまとめた「給与調査2018」を刊行した。これについての発表会を2018年1月16日に開催した。発表会では同社の代表取締役社長であるデイビッド・スワン氏が登壇し、その概要について紹介した。

スワン氏はまず、こうしたレポートを発表してから19年目を迎えたことを紹介しながら、2017年を振り返ると、世界的に見られた傾向の1つとしては、テクノロジーのスタートアップに関する需要が見られたと語る。デジタル化が進められていく中で専門性を持った人に対する需要が強かったとのこと。ビッグデータを社内に取り入れてよりうまく活用しようという考えの中から、こうした分野の専門性を持つ人材に対する需要も高まっているそうだ。

こうした時代の流れに伴って、例を挙げると金融機関に対する規制の強化などがあり、これを背景にサイバーセキュリティ、フィンテックといった分野への人材需要も増えている。規制やコンプライアンス、リスク管理から監査、法務的な経験などがある人も求められている。

■日英バイリンガルの技術者が求められているテクノロジー分野
日本市場の特徴の1つとしてあげられるのは、グローバリゼーションが進む中で、日英のバイリンガルで仕事ができる人材が求められていることだ。専門性だけでなく、英語力も採用のキーポイントとなってきている。また、さまざまな特定のイシューに関するソリューションを提供できる能力を持っている人、データを解析して答えを導くことができる人、戦略的な判断ができる人材が求められているだけでなく、データの活用分析にも需要が見られたそうだ。

このほか通常の伝統的な旧来型の技術職、メカに対する技術力+電子的なもの、エレクトロニクスの専門性を兼ね合わせたメカトロニクスの需要も広がったとのこと。フィンテック、ヘルステック、HRテック、リアルステートテックといった分野にも、最先端のITテクノロジーを活用できる人材に対する需要も増えており「とても面白いトレンド」(スワン氏)。

セクター別の動向としては、自動車ではソフトウェアエンジニアと呼ばれる技術職、レーダー、超音波、カメラを駆使したセンサリングに対する技術的基礎を持っている人のほか、プログラミングを行える、システムに関する才能を持っている人の需要が見られた。

製造業では、IoTやインダストリアルネットワークシステムなど、次世代型の産業技術を使いこなせる人材に関しての需要が見られるのだという。

また価格分析をできる人材に対する需要が、サプライチェーンなどの分野で顕著だった。いわゆる分析技術とビッグデータを生かせる形にしていく手段へのアプローチをするために、データをうまく使って分析を取り入れることでマージンが取れる事業活動をしたいという思い入れの表れだろう、とスワン氏。

一方化学分野では営業に対する需要が多かったのだそう。EVや半導体を用いた事業活動の高まりに伴い、さまざまな需要が高まってきたことが背景にある。

また関西では若いバイリンガルの人材に対しての需要が見られた。最初の採用は有期の契約だったりするが、よい人材については将来的には正社員にしていく、という流れだ。

ITに関しては、フィンテック企業の新規日本参入が複数あったので、優秀な人材の取り合いが見られた。Webやモバイルに関わる開発能力を持った人への需要が高かったという。中でもAI技術に対する知識を持っている専門家、技術者への需要の高まりが見うけられた。

こうした流れの中で、正社員を過剰に雇用するのは起業にとってリスク要因となるため、それに対する1つの策として、契約社印としてまず人材を確保することが多くなっているという。彼らは最先端の技術を身につけているので、それを企業内にいち早く取り入れる手法として、こうした方法が取り入れられているようだ。

■非エンジニアリング分野の傾向について紹介
金融サービスについては、アセットマネージメントを行っているような会社の、セールス担当に対する需要が多かった。特にさまざまなクロスボーダーのプロジェクト、M&Aが1つの例になるが、それが進行する中で、M&Aの実体験を持っている人材、モデリングや財務的な分析をする能力を持っている人材に対する需要が強かった。そうした才能のある人材を社内に取り込むことで、成果を享受していこうという企業の動向が見られた。

リアルステートファイナンスセクターでは、アセットマネージメントなどを行う専門性の強いところに対する需要は継続して強かったとのこと。

一方小売りや消費財の動向についてだが、店長、ストアマネージャーとして活躍する人、スタッフに対する需要が増えており、観光国としての観光客の招き入れによってツーリズムが強まっているということのほか、店舗の数を見ても、路面店における店舗展開が顕著な動向として現れているので、そのあたりが背景になっていると分析する。

eコマースについてだが、これについての全体売り上げにおけるパーセンテージが高まっているので、これに関連する人材の需要が見られた。

■東京オリンピックに向けた動向は?
2020年に東京がオリンピックを主催することが決まっている中で、それに向けた動きとして、マーケティングスペシャリストに対する需要が見られた。これは消費者をスポンサー活動やイベントに渦の中に巻き込んでいく活動のためであると思われる。

ホテルあるいはレジャーの業界でもバイリンガルな人材に対する需要が大きく、これまでにないほどの増加傾向だったそう。特に関西では国際空港の開設により、フライトの数が増えたので、インバウンドに対する需要が見られた。

ニーズが高まりを見せる中で、各事業会社ではそのポジションをしっかりと埋めようという動きが強まったので、雇用市場としては受給がタイトな状況になっているという。1例を挙げると、大阪地区では有効求人倍率で、サービスプロフェッショナルでは3.25倍だが、バイリンガルではその3倍から5倍程度になったそうだ。なお大阪はIR、統合型リゾートの展開も見られる。これは2025年に万国博を控えているという動きにあると想定されるとのこと。大阪市を挙げての努力を続けているため、これが実を結んでいくとすれば、それに伴う需要の増加が予想される。

ヘルステックと言われている分野については、メディカルデバイスの業界での需要が高まりが見られる。メディカルデバイスに関連して、臨床を扱えるような、さまざまな過程において実力を発揮できる分野の需要も高まったという。製薬会社では、特にメディカルアフェアーズスペシャリストという人たちへの需要が強かった。

また関西の動きだが、バイオテックスタートアップ企業の動きに関わって、その基盤を初めて使った動きの中で、インキュベーターの施設や、大学と協力して扱う活動の高まりが見られたそうだ。

■これらに共通する傾向を探る
ここからは一般的なトレンドについてもご紹介しよう。給与水準は転職をしない、同じ会社に勤め続けるプロフェッショナルの昇給率は限定的だった。一方、転職をしたプロフェッショナルの典型的な水準としては、10~15%ほど基本給が上がったそうだ。そのアップ度合いは、新興のテック分野ではさらに高く、20~25%だった。

多くの企業に見られた傾向として、いわゆるミッドエイジ、シニアのプロフェッショナル採用が見られた。即戦力を得たいという企業のマインドの反映だろうとスワン氏。2017年年間を通して、40歳を超えたプロフェッショナルの採用動向が見られたそうだ。

おしなべて才能ある人材は、人材不足の状況が市場で続いたので、企業側としては、2017年はワークスタイルをより柔軟にすることでよりよい人材を得ようという努力が見られた。最初は契約社員として入り、いい条件の中で正社員としての職を探していくという流れにつながってきたとスワン氏は見ている。

もちろん企業側としても契約として入った優秀な人材に対して、正社員として継続雇用したいという動きもあった。せっかく契約社員として最先端の技術を持つ人材を取り込んでも、競合他社に流れては意味ないので、それを阻止する動きはあったようだ。

とはいえ、人材不足の中で何が何でも正社員でということではなく、起業としては正社員の数についてバランスを取りながら、必要な人材の数を契約社員として調達するという動向がトレンドとして続いている。過剰採用をしないという意識は強いようだ。

また、企業側も政府としても、女性の職場復帰、職場における活躍に対しての取り組みが多く見られているのもトレンドだ。企業が柔軟なワークスタイルを提供する、契約社員の時給を引き上げるといったところでの取り込みが見られた。女性が契約社員としてで労働市場に戻ってくるという傾向も見られた。女性のライフステージの一環として、子育てがあったり介護があったりして、仕事から長いブランクを持つ人が再参入するにあたっては、契約社員というスタイルによって、柔軟性がもたらさせるのが利点としてあったようだ。

日本については、人口が減少していく中で各分野の人材不足傾向はさらに進んでいくことが予想される。こうした中にあって、自らを高く売るための方法について、この分析が考えるヒントになればと思う。

ロバート・ウォルターズ・ジャパン

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