キーコーヒーは、今年発売40周年を迎えた「トアルコ トラジャ」を、同社初の精選技術である「キーポストハーベストプロセッシング」により加工した新商品「トアルコ トラジャ KEY Post-Harvest Processing」を2018年9月26日から数量限定で発売した。価格は100g豆で4,968円(税込)。
発売に先立って9月19日には発表会が開催された。ここでは同社の取締役専務執行役員 マーケティング本部長である川股一雄氏、同社のマーケティング本部開発研究所の大塚祐一氏、同社のマーケティング本部R&Dグループ RC設計チームの阿部祐美子氏が登場し、開発の経緯を語ってくれた。
■ コーヒーが直面する「2050年問題」
コーヒーは基本的にプランテーション作物だ。亜熱帯における畑で栽培するものと、それを2次加工する農園型で経営されている。ゴムやコーヒー、ココア、パームオイルが代表的なプランテーション作物だ。つまりコーヒーを栽培する活動と、収穫(Harvest)したあとに加工(Processing)をするという2つの工程があるわけだ。
同社の100年ビジョンは「コーヒーに関して信頼度No.1の会社であること」「コーヒーの可能性を追求し、その価値を提供できる会社であること」「お客様から最初に選ばれるコーヒー会社であること」だ。「イノベーションを伴った可能性を追求するのが本部の方針」と川股氏。
川股氏は4年間現地での活動に携わったそうだが、生産コストの要求も日本から来るので、「理想のコーヒーを届けるという大きな使命と同時に、企業価値も向上しなければいけないという2つの面にチャレンジしてきた」(川股氏)。
しかし2015年のミラノ万博で、気候変動が激しくなり、コーヒーの「2050年問題」が起きることが提起された。年間の平均気温が上がり、雨の降り方のパターンが変わることで、コーヒーの生産量が減ってしまうと言う内容だった。生産できる土地が減ると同時に、収量も減ってしまうという事実が明らかにされた。またコーヒーの品質低下も深刻になる。これを契機に、40年の生産シーンで、地球温暖化に対する対策が取れないのか考え出したそうだ。
その結果、日本で持っている加工ノウハウを川上の生産現場で応用するチャレンジに取り組むことになったとのこと。「生産活動においては日本のノウハウは移転できないが、ポストハーベストプロセッシングについては食品加工の技術を現地で応用できる」(川股氏)。2015年の終わりにはテストプラントをスタートさせ、2016年には大塚氏が現地に行き、60日間農園で寝泊まりをしながら試験をスタートさせた。「日本の技術を現地にフィードバックして、生産者とコーヒーラバーをつなげる持続可能なシェアードバリューを作りたい。ニューヨークでは約450gの原価が95セントまで下がってしまった。これでは現地の生産者が生きていけない。皆で付加価値を付けて、コーヒーラバーも楽しんでいただけるような価値を付けたい。これがこの商品が開発された経緯」と川股氏は語った。
■インドネシアで試行錯誤を続けた60日間
大塚氏は「キーポストハーベストプロセッシング」の技術について語ってくれた。本製品については「氷温熟成」が採用されている。食品は0度では凍らない。それよりも下の温度で凍結する。そこで0度から氷結点までの間の温度で管理することで、細胞が生きた状態で保管するための技術が氷温熟成だ。
氷温の主な効果としては「高鮮度保持」「高品質化」「有害微生物の減少」が挙げられる。同社は10年ほど前から氷温熟成したコーヒーを発売しているが、生豆中の水分が均質化することで焙煎しやすくなり、クリーンでスッキリとした風味が得られるとのこと。また氷温化にさらされると、凍るまいとする自己防御機能が働き、糖類や遊離アミノ酸を含む不当物質を貯えるので、うまみや甘み成分が増加する。
同社はコーヒーチェリーに着目。これまではコーヒーチェリーは急激に鮮度が低下するため、収穫直後に脱肉、精選をする必要があった。そこで氷温技術を応用することで、追熟できないかと考えたわけだ。大塚氏はインドネシアに長期出張をして、険しい山道を進んで手作業で豆を収穫し、貴重なチェリーを何度も無駄にしながら研究を続けたとのこと。そしてコーヒーチェリーを氷温熟成させる「キーポストハーベストプロセッシング」の開発に成功した。これを使うことで腐敗することなく追熟が可能になっただけでなく、主要成分が増加し、焙煎豆の香気成分も増加するという、品質が向上する結果となった。
■新技術により最高のものを届ける
阿部氏は今回完成した「トアルコ トラジャ KEY Post-Harvest Processing」について紹介した。トラジャの特徴として上げられるのは、口に含むと柑橘系の酸味を感じるほか、若草のような、爽やかな香りを持っていることが挙げられる。新技術を導入した本製品は追熟によりパイナップルやベリーのような複雑な香味となったそうだ。
しかし、この豆をどのくらい焙煎したらおいしくなるのかはまったくわからなかったのだとか。「試作ができるほどの豆もほとんどなかった中で、頭の中で想像しながら作り上げた。針の穴を通すような作業を続ける毎日だった」と阿部氏。「しかしコーヒーそのものに価値ができた」と語った。
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