MotorolaがAndroidスマートフォンで攻勢をかけている。2009年11月にアメリカで発売された「Droid by Motorola」がヒット。そのヨーロッパ版と言える「Milestone」も出だしは好調とのことだ。さらに中国向けにもスマートフォンの投入を発表している。ここ数年ヒット作に見放されていた同社にとって、Androidスマートフォンは救世主になろうとしている。
Droidはアメリカの通信事業者Verizonから販売されている。AT&TによるiPhoneの販売と同様に、通信事業者の強力な販売プロモーションの後押しを受けている。またVerizonがDroidを販売する理由は「iPhoneを出したくても出せない」という背景もあった。同社の通信方式はCDMAであり、GSM/W-CDMA方式対応のiPhoneは発売したくともできないのである。CDMA版のiPhoneが将来登場する可能性もあるかもしれないが、たとえそれを待ったとしても常にAT&Tの後塵を拝することになってしまう。すなわちAT&Tが好調なiPhoneセールスを記録し加入者を増やしていく中で、VerizonはiPhoneに匹敵する魅力ある製品をラインナップに揃える必要に迫られていたのだ。Droidは世界初のAndroid OS 2.0搭載ということで性能と話題性に長けているだけではなく、Verizonネットワークで利用できるCDMA2000 1x EV-DOに対応している。
Droidは販売前からVerizonによる大々的なティーザーキャンペーンが行われたこともあり、販売開始後1週間で25万台が売れたとのことである。iPhoneが発売直後の同じ期間で160万台売れたことと比較すると少ないように見えるが、iPhoneは8カ国での販売数である。これに対しDroidはVerizonという一事業者、一カ国のみで販売されたことを考えると大ヒットと言えるだろう。雑誌Timeが選ぶ「Top 10 Gadgets of 2009」でもiPhoneを抑えて堂々の1位に輝いたほどで、アメリカでは今最もホットな製品になっている。
MotorolaはDroidのヒットを受け、通信方式をGSM/W-CDMAとしたMilestoneという名称の同一モデルをヨーロッパ向けに販売開始している。CDMA方式だけではなくGSM/W-CDMA方式の製品も投入できるのがMotorolaの強みであり、今後世界中の通信事業者から--中にはiPhoneを販売している事業者からも--Milestoneが発売されるだろう。アメリカ市場は「iPhone VS 他社スマートフォン」という動きだが、ヨーロッパやアジアではiPhone販売事業者がNokiaのSymbian S60やHTCのAndroid端末など複数のスマートフォンを販売することは珍しく無い。すなわちMotorolaのAndroidスマートフォンの人気が高まれば、通信事業者にとってもiPhoneと合わせ複数の端末に販売リスクを分散することが可能になる。つまりMilestoneの販売が広がれば、今後Appleと各国の通信事業者との独占販売契約に何らかの影響を与える存在にもなりうるだろう。