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EY Japan、経済安全保障推進法への対応およびサプライチェーン戦略策定を支援するサービスを強化

ビジネス

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EYSC)は、2024年5月に運用が始まる経済安全保障推進法に基づく「基幹インフラ役務の安定的な供給の確保に関する制度に対応する事業者の事前審査」を支援するサービスを提供している。同社はサービスを強化し、インフラ事業者の委託先となる重要設備や重要維持管理の供給者による必要な制度対応、および、サプライチェーン戦略策定を支援するコンサルティングサービスを提供する。

2022年5月11日に「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)」が成立した。経済安全保障推進法の柱となる4施策の1つに「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度」があり、2023年11月16日には国民生活や経済活動の基盤となる役務を提供する「特定社会基盤事業者」約200社が指定された。対象事業者は2024年5月17日以降、特定重要設備※の新規導入や重要維持管理等を外部に委託するには、委託先等も含めて政府の定める措置を講じ、政府の基準に基づく審査に通過することが求められる。

※特定重要設備:特定社会基盤事業の用に供される 設備、機器、装置又はプログラムのうち、特定社会基盤役務を安定的に提供するために重要であり、かつ、我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されるおそれがあるもの

01


(出所)内閣官房「特定社会基盤役務の安定的な提供に関する制度の運用開始に向けた検討状況について」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyohousei/r5_dai7/siryou1.pdf(2024年2月19日アクセス)を基にEY作成

特定社会基盤事業者が求められる措置には、「サイバーセキュリティ対策や設備の安全なサプライチェーンの確保」、「設備に対する物理的攻撃への対策」、「安全な委託先選定」などがあり、自社の対応に加え、委託先および再委託先等のリスク管理措置対応の実効性の担保も特定社会基盤事業者の責務となる。届出内容に不備がある場合、必要な措置の指示もしくは計画の中止を勧告され、最悪の場合は、インフラ設備導入計画の中止や業務の停止の可能性がある。

特定社会基盤事業者が設備導入や維持管理を自社で行っていることは少なく、審査項目となる情報提供やリスク管理措置の要件への準拠を実務上求められるのは特定重要設備や重要維持管理等を供給している委託先(以下、供給者)である場合が多くある。供給者にも、特定社会基盤事業者が審査に通過するための情報提供や、リスク管理措置の要件への準拠が求められ、サプライチェーンや提供サービスのセキュリティ水準を見直すなどの対応が必要だ。

現在発表されているリスク管理項目は、不明確な点もあり、文字通りに措置を講じるだけでは審査に通過できない可能性がある。求められているリスク管理措置の導入背景を解釈し、法律の趣旨を考慮した対策が必要だ。

■提供サービス
EYは、経済安全保障の専門チームを擁し、日本のみならず米国や欧州をはじめとした各国におけるインテリジェンスを保有している。サイバーセキュリティや物理対策における経済安全保障のグローバルスタンダードを参考にしながら、事前審査を通過およびその本質に対応した体制構築をサポートする。また、本審査では供給者の設置国や役員の国籍情報、特定国への売り上げ依存状況等の情報が求められており、場合によっては重要設備の構成設備等のサプライチェーンの見直しを求められる可能性もある。今回新たに、供給者および、サプライチェーン戦略策定を支援するコンサルティングサービスの提供を開始し、対象事業者をより包括的に支援する。

<詳細情報>
サービス名称:経済安保推進法基幹インフラ事前審査支援サービス
サービス概要:2024年5月に運用が始まる経済安全保障推進法に基づく基幹インフラ役務の安定的な供給の確保に関する制度に対応するインフラ事業者、および、インフラ事業者に特定重要設備等を供給している供給者の審査通過の支援、サプライチェーン戦略の見直し、体制構築などをサポート。

担当する主なプロフェッショナル:
EYSC ストラテジック インパクト パートナー 西尾 素己氏
ホワイトハッカーとしてサイバーセキュリティ業界の最前線で従事した後、NIST標準の導入、輸出管理をはじめとした経済安全保障に係るあらゆる経営アジェンダを支援。

EYSC ストラテジック インパクト 泙野 将太朗氏
米系コンサルティングファームでの勤務を経て、英国にて安全保障国際関係修士を取得後、現職。学術界とのネットワークを活用した経済安全保障政策調査、対応アセスメント、戦略策定、制度設計、制度改革に従事。

EYSC ストラテジック インパクト 菊池 咲氏
米系金融機関で信用リスク分析・管理に従事した後、米国にて国際政治・核抑止・認知戦を研究し、国際関係修士(安全保障専攻)を取得。各国政策に基づく民間企業の経済安保戦略策定支援や経済安全保障推進法対応支援に従事。

EYSC ストラテジック インパクト 松尾 彩夏氏
主に企業に対する経済安全保障リスクアセスメント、リスク対応戦略策定支援に従事。自動車、エネルギー、製薬等多様な業界への支援経験を持つ。

EYSC ストラテジック インパクト 田中 文浩氏
英国にて安全保障学修士を取得後、主に企業に対する全社的リスクマネジメント体制構築やリスク分析、経済安全保障推進法対応のコンサルティングに従事。

提供サービス:
・新制度に伴う社内体制構築支援
・法律が定める特定重要設備・構成設備の該当範囲の設定
・審査対応支援(監督官庁からの確認に対する回答案検討支援等)

・社内におけるリスク管理措置導入支援
 ・リスク管理措置の準拠状況アセスメント
 ・リスク管理措置の導入支援(業務フロー・規程改定、人事制度見直し等)
 ・リスク管理措置の内部監査プログラムの作成支援

・委託先に関連する支援(特定社会基盤事業者向け)
 ・委託先選定・調達・検品基準の作成支援
 ・委託先に対する監査プログラムの作成支援
 ・委託先とのコミュニケーション支援(委託先から情報提供を拒まれた際などの対応支援)

・顧客に関する支援(供給者向け)
 ・顧客とのコミュニケーション支援(顧客から過度なリスク管理措置を求められた際などの対応支援)

・特定重要設備のサプライチェーン戦略策定支援
 ・特定重要設備のサプライチェーンの調査支援
 ・設備更新計画とサプライチェーン変革方針の策定支援
 ・サプライヤーを巻き込んだ生産拠点変更・素材改革などの中期変革計画の立案
 ・特定重要物資指定の申請支援
 ・代替サプライヤーの探索支援

EYSC ストラテジック インパクト パートナー 西尾 素己氏のコメント:
「特定社会基盤事業者に対する要求事項、特にサイバーセキュリティ関連の要求や明示されていないサプライチェーン管理の要求については、『どこまで対応すべきなのか』が不明瞭な事項もあり、多くの企業が苦労しています。EYSCでは独自に当該基準を分析し、的確に政府の要求事項に対応するためのフレームワークを開発しました。世界的ベストプラクティスであり、日本政府での採用も加速しているNIST SP800-53/171※との対応関係も整理し、システム面での対応方針についても的確な支援を提供可能です」
※米国の政府機関である米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)が定めたセキュリティガイドライン

EYSC ストラテジック インパクト シニアマネージャー 泙野 将太朗氏のコメント:
「経済安全保障推進法に基づく審査制度がいよいよ開始しますが、多くの特定社会基盤事業者や重要設備・重要維持管理等の供給者、また、審査を担当する省庁が本制度への対応に際してさまざまな課題に直面している状況です。開始時ゆえ審査を通過するための水準が確立していない中で、本制度の趣旨や、経済安全保障上のリスクを低減するためのグローバルスタンダードを基に、審査の通過およびサプライチェーンの強靭化による事業の安定的供給を目指して支援いたします」

詳細は以下を参照のこと。
経済安全保障推進法に基づく基幹インフラ役務の安定的な供給の確保に関する制度対応・サプライチェーン戦略策定支援
https://www.ey.com/ja_jp/consulting/support-for-institutional-response-and-supply-chain-strategy-development

日本語版ニュースリリース:
EY Japan、経済安全保障推進法への対応およびサプライチェーン戦略策定を支援するサービスを強化
https://www.ey.com/ja_jp/news/2024/03/ey-japan-news-release-2024-03-25

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生成AIの台頭により、通信事業者が2024年に直面するリスクの変容!EY、調査結果を発表

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EYは、通信業者に関する最新のレポート『2024年版 通信事業者が直面するリスクトップ10』を発表した。調査によると、通信事業者が2024年に直面するリスクの最上位は、プライバシー、セキュリティ、信頼面で取り組むべき課題の変化であることが判明した。また、生成AIの台頭により既存のデータガバナンス戦略の有効性が揺らいでいるため、通信事業者のサイバーレジリエンス(サイバー攻撃に耐え回復・適応する能力)が外部圧力に晒されている。

通信事業者の68%が、人工知能(AI)の予期せぬ影響・結果を管理するための施策が十分に行われていないと考えており、74%が、AIを使ってサイバー攻撃や他の悪意ある行為を行う可能性のある「脅威」に対抗するため、より多くのリスク緩和策を講じる必要があると回答している。1同時に、通信事業者の53%が、サイバー攻撃に関連して自社が負うコストが、2023年には300万米ドルを超えると予測しているが、これは2022年から40%の増加となっている。

AIの影響によって、法規制環境に関連したリスクが、2023年の10位から、2024年には9位に上昇した。AI関連の法規制が今後どのようなものになるのか不透明なため、通信事業者は不確実性を感じていることが、本調査で浮き彫りになった。この不確実性をさらに大きくしているのが、AIガイドラインと今後予定される法規制のバランスについて、各国で政策にばらつきがあることだ。特にEU諸国では、こうしたばらつきのため、AIがイノベーションを鈍化させ、国際的な競争力を弱めてしまうのではないかという懸念が広がっている。

■EYグローバル・テレコミュニケーション・リーダーのTom Loozen氏のコメント:
「リスクレーダーの順位の変化に、生成AIが業務プロセスを革新し、ビジネスのやり方を変革することで、どのように通信業界を進化させているかが表れています。このような状況では、新たなリスクに対応するため、企業はデータガバナンスの枠組みを見直すことが不可欠になるでしょう。それには、意思決定に新しいアプローチを導入すること、またサイバーレジリエンス、データ倫理、法規制、デジタル政策について目まぐるしく変化する課題に対応する際に、コンセンサスを形成できるリーダー間の密な連携が求められます」

■EYJapan テレコムセクターリーダー 斎藤 武彦氏のコメント:
「日本の通信事業者にとって、生成AIの台頭は自らのデジタル化と顧客のデジタル化という面で大きなビジネスチャンスと捉えられている。欧米と異なり、日本の通信事業者はITサービスの領域をグループ内に含めており、テクノロジー企業と競合している。また、海外でもITサービス企業のM&Aを利用して急拡大を続けている。この新しいテクノロジーである生成AIが持つ負の側面を回避しつつ、自社のビジネス拡大にどう結び付けていくかが非常に重要です」

■人材を惹き付け確保する必要性
今回初めてTop10に登場し、突如3位に浮上したのが、人材とスキルのマネジメント力不足のリスクだ。ここにも、AIの影響が現れている。生成AIとエッジコンピューティングの両方で、新たな技術ライフサイクルが生まれつつある現在、デジタル人材に対する需要がますます高まっている。とりわけ通信業界にとって差し迫った課題となっているのが、ネットワークエンジニアの不足だ。

通信事業者が抱える予算の制約が、この傾向をさらに悪化させており、将来の人材パイプラインが脅かされている。通信事業者の雇用主の半数以上(55%)が、一時的に新規採用を凍結しているが、これは他のセクター全体(28%)の2倍となっている。そして、通信事業者の61%が、コスト削減施策の一環として給与や福利厚生をカットしているため、人材の確保が難しくなっていると回答している。これも、他セクターの平均(44%)と比べてかなり高い数値となっている。

■EYグローバルテクノロジー・ メディア & エンターテインメント・テレコム(TMT) リードアナリストのAdrian Baschnongaのコメント:
「通信事業者は予算の制約によって、必要不可欠なスキルや人材を新たに獲得することが難しくなっています。従って、通信事業者は、既存の従業員の学習・研修、スキルアップ(既にあるスキルの強化)、リスキリング(新しいスキルの習得)に今まで以上に力を入れ、現行の従業員のスキルを強化するための策を講じなくてはなりません。現行の従業員にこれまでとは違う、新しい関わり方をすることで、従業員がデジタルツールを活用してスキルを取得できるようになるだけでなく、人を中心に自社のパーパスを刷新することで、その環境下で働く従業員が顧客やその他のステークホルダーとより強固な関係を作ることができるようになります」

■顧客が求めるのはよりお得なプラン
生活費高騰の中にある顧客への対応は、順位を1つだけ下げて2位となりましたが、2024年も引き続き通信事業者が迅速に取組むべきリスクとなっている。固定回線とモバイル回線への出費を積極的に削減しているのは消費者の16%のみだが、多くの消費者がよりお得な料金プランやアドバイスを求めている。具体的には、消費者の60%が、生活費高騰によって、これまで以上にいろいろな料金プランを検討し、最もお得な料金プランを探そうとする可能性が高くなったと考えている。実際、価格比較サイトを閲覧したり、友人や家族に助言を求める家庭の割合が、2022年の19%から2023年は30%に上昇している。

■Loozenのコメント:
「顧客への誓いを再度明言すると同時にバリュープロポジションをよりシンプルにすることは、通信事業者が顧客との関係性を維持し発展させる助けとなり、その結果、長期的価値を創出する新しい道を開くことになります」

本調査について
「2024年版 通信事業者が直面するリスクトップ10」は、EYが毎年定期的に発表している調査レポートの2024年版で、電気通信セクターが直面しているリスクのうち、最も重要なものを特定することを目的としている。本調査のアナリストは、EYのセクターリサーチプログラムを利用し、EYの業界や消費者に関するサーベイ結果からのインサイトを参照し、セクター専門家として進化し続ける視点をもって、これらを活用している。こうして得た調査結果は、EYのリスクレーダーを使用して、4つの領域に分類されている。
・コンプライアンス上の脅威(政治、法規制、コーポレートカバナンスに由来)
・オペレーション上の脅威(プロセス、システム、人材、企業のバリューチェーン全体に影響を及ぼす)
・戦略上の脅威(顧客、競合他社、投資家に関連)
・財務上の脅威(市場、エコシステム、投資の変動から発生)

脚注
1.「EY CEO Outlook Pulse」調査(2023年6月)の中で通信事業者が回答したもの
2.「2023年 EY Global Cybersecurity Leadership Insights」調査(2023年10月)の中で通信事業者のCISO(最高情報セキュリティ責任者)が回答したもの
3. EY報告書「人工知能(AI)の世界的な規制状況(The Artificial Intelligence global regulatory landscape)」(2023年9月)より
4. 米国会計検査院ウェブサイトの”Telecommunications Workforce:Additional Workers Will Be Needed to Deploy Broadband, but Concerns Exist About Availability”ページ(2022年12月)より(https://www.gao.gov/products/gao-23-105626)
5. 「EY 2023 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2023)」(2023年9月)の中で通信事業者が回答したもの
6. EY調査「Decoding the digital home(デジタルホームを解き明かす)」(2023年9月)より

※本ニュースリリースは、2023年11月30日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳し、日本担当者のコメントを追加したもの。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先する。

英語版ニュースリリース:
The emergence of GenAI is reshaping the 2024 telecoms risk radar
https://www.ey.com/en_jp/news/2023/11/the-emergence-of-genai-is-reshaping-the-2024-telecoms-risk-radar

日本語版ニュースリリース:
EY調査:生成AIの台頭により通信事業者が2024年に直面するリスク(リスクレーダー)の変容
https://www.ey.com/ja_jp/news/2023/12/ey-japan-news-release-2023-12-20

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2023年はマーケットの上昇にもかかわらずIPOに逆風!EY、調査結果を発表

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EYは、2023年第4四半期のIPOに関する調査結果を発表した。世界のIPO市場は1,298件のIPOで総額1,232億米ドルを調達し、2023年の幕を閉じた。全体として、欧米市場のセンチメント改善が中国経済の冷え込みを相殺する中、発展途上市場の小型ディールの熱気と大型ディールの精彩のなさが対照的となる、市場ダイナミクスの転換に直面した一年となった。

2023年のIPOの調達額は、昨年の低調なペースと比べても約3分の1、遅れているが、件数は米国とEMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)の両方で増加している。これらを含む調査結果は、EYのレポート EY Global IPO Trends 2023※で公表している。
※ EY Global IPO Trends 2023
https://www.ey.com/en_gl/ipo/trends

データが示すポジティブな経済状況を背景に、市場が力強く上昇しボラティリティ指数が低水準にあるにもかかわらず、公募増資は、米国の9月の短期的な動きを除いて、多くの先進国市場で低調に推移している。ここ2年間にわたるIPOの停滞の後、IPO発行者と投資家は市場の上昇に乗ろうと躍起になっていたが、注目度の高いIPOが次々と上場後に売り出し価格割れし、市場心理に影響を与えた9月以降、この熱意は冷めた。マクロの不確実性に直面した株式投資家がメガテクノロジー株に固執したことも新規上場意欲を減退させた一因だ。極めて積極的な金融政策もIPOに影響を与える主要因となり、株式市場全体のパフォーマンスを上回る影響力を持った。

5年平均のIPO活動との比較では、注目すべき点として、インドネシア、マレーシア、トルコで件数と調達額が増え、インド、サウジアラビア、タイでは件数が増加した。対照的に、香港のIPO市場は今年の調達額が20年ぶりの低水準となり、中国本土のIPO発行ペースは2023年後半に鈍化した。

今年は製造業セクターと消費財セクターがポジティブな動きを見せ、特に製造業セクターは件数が最も多く、消費財セクターは件数と調達額の両方で増加した唯一のセクターだった。一方で、テクノロジーセクターは、米国で注目されたハイテクIPOに対する投資家の反応が今ひとつだったことや、生成AIのスタートアップがまだベンチャーキャピタルの投資段階にあることから、引き続き件数は減少傾向だが、調達額の面では、2023年のIPOをリードした。

また、ヘルス&ライフサイエンスセクターは、件数と調達額が大幅に減少しており、特に中国本土と米国でその影響が顕著に現れている。このセクターでのプライベート・エクイティとベンチャーキャピタルの支援を受ける企業の数は2021年以来78%減少した。セクター別のIPOトレンドは、世界経済とサプライチェーンのダイナミクスの変化を反映しており、セクター間で新たな勝者と敗者が生まれていることを示している。しかし、ファンダメンタルズの強さが依然として全体を押し上げていることに変わりはない。

■エリア別パフォーマンスの概要: 2023年は各エリアが予想しなかった結果に
2023年の米国のIPOは、2022年比で15%増加しましたが、注目度の高いディールがいくつかあったため、調達額は2022年の約3倍に跳ね上がった。合計で153件が227億米ドルを調達し、そのうち85%以上が米国取引所に上場した。5億米ドル以上を調達したディールは、2023年には7件あり、2022年の4件から増加したが、米国取引所におけるIPO活動は引き続き小規模ディールが中心となっている。

ブラジルのIPO市場は、情勢不安の中、上場のない期間が2年を超え、過去20年で最も長い不毛の期間を記録した。カナダの主要取引所では、2022年と2023年のIPOはそれぞれ1件のみで、このレベルのIPO活動は、過去20年でこの取引所では前例のないものです。Americas(北米・中米・南米)では、IPO取引の低調、金利上昇、地政学的懸念が、公開市場への参入を目指す企業にとって厳しい資本調達の環境を生み出している。

今年、Asia-Pacificでは732社が新規上場し、調達額は694億米ドルで、それぞれ前年比18%減、44%減となりました。経済的・地政学的な逆風に直面するAsia-PacificのIPO市場にとって、2023年は厳しい年となり、中国本土と香港の2大IPO市場は引き続き件数・調達額ともに減少した。中国本土から米国へのクロスボーダー上場の平均ディール規模も20年ぶりの最低水準となり、2021年の水準から93%減少した。ただし、中国本土は引き続きIPO資金の重要な源泉であり、2023年の世界全体の調達額の40%以上に寄与した。

Asia-PacificのIPO市場では、ESG(環境、社会、ガバナンス)およびテクノロジー分野でプライベート・エクイティとベンチャーキャピタルに支えられた資本力のある企業は、自社の評価が向上するまで待つ余裕がある。現実的な価格設定とIPO後のパフォーマンスが、強力なガバナンスと優れたエクイティストーリーを備えた上場準備会社の2024年の上場を促すかもしれない。

EMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)のIPO市場は回復基調にあり、MENAの大型ディール、インドとCESAの活発化、米国への注目度の高いクロスボーダーIPOを背景に、調達額は39%減少したものの、件数は7%増加した。この地域は、413件、311億米ドルの調達額で1年を締めくくった。また、世界の上位10案件のうち5案件がEMEIAからのものであったとはいえ、2022年と比較すると、大型IPOよりも小型IPOの件数が多かったため、調達額が減少した。

2023年もEMEIAのIPO上位10件の大半はMENAで、うち6件を占めています。英国では、高インフレと金利上昇に加え、厳しい市場環境がIPO活動を鈍化させた。EMEIA全体では、2024年の展望は楽観的ですが、予断を許さない市場環境にあって慎重な歩みが求められる。各国では、各国政府および規制当局が、破壊的イノベーションへの投資を促進するため、資本市場を刺激する措置を講じている。

■2024展望 : IPO候補企業は好機に備え十分な準備を
EY Global IPOリーダーのGeorge Chanのコメント:
「IPOへの熱は高まりつつあり、改善されたアフターマーケットのパフォーマンスとともに小規模な取引が増加しています。 多くの政府がIPOを促進するための措置を講じていますが、特に高成長経済圏では活動が非常に活発です。金融政策が緩和され、地政学的な状況が安定する前に、IPOを検討している企業は、2024年中の限られたチャンスを生かすために、基礎を築き、価格に対する期待を管理することに焦点を当てるべきです」

世界的には、緩和されつつあるインフレーションと2024年の利上げカットの可能性が、流動性とリターンの見通しを向上させることで、投資家をIPOに呼び戻す可能性がある。ただし、持続的な地政学的不安は投資家の信頼を損なうかもしれない。

一言でいうと、来年のIPO復活はマクロの改善にかかっています。企業はIPOの好機を広げるためにより良い市場環境を待ち望んでいる。

向かい風が和らげば、投資家の信頼が回復し、市場は再びIPOに好機をもたらすだろう。

2024年にIPOを検討している企業は、十分に準備する必要がある。考慮すべき主要な要因には、インフレーションと金利、政府の政策と規制、経済活動の回復、地政学的な緊張と紛争、ESGの議題、およびグローバルサプライチェーンが含まれる。代替的なIPOプロセス(直接上場、重複上場、セカンダリー上場)から他の資金調達手段(プライベート・エクイティ、借入またはトレードセール)まで、多様な選択肢も検討すべきだ。

EY Japan IPOリーダー/EY Startup Innovation共同リーダー/EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター長の齊藤 直人氏のコメント:
「2023年度の日本のIPOマーケットのうち、グロース市場は、株価指標(グロース250)が夏以降低迷したため、同市場に上場した企業は、65件と昨年の70件に比べ減少し、また、例年IPO件数が多い12月に東証に上場した企業は、15件と昨年の25件に比べ大幅に減少しました。

しかしながら、年間を通じて見るとIPO件数は96件と昨年の91件を少し上回る結果となりました。調達資金が100億円超の案件は13件となり、昨年の3件から大幅に増えております。公募時の時価総額が1,000億円を超える案件は4件となり、昨年の2件と比べても倍増しており、また、グローバルオファリングした企業も7件と昨年の4件に比べると増加し、昨年と比べ全体としては、規模は多くなりました(日本のIPOデータは2023年12月1日時点)。

東京証券取引所では、将来的にグロース市場の上場基準を引き上げる検討をしているとも言われていることから、将来IPOを目指す企業は、市場動向と合わせて、この動きにも注目する必要があります。」

※本ニュースリリースは、2023年12月14日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したもの。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先する。

英語版ニュースリリース:
Multiple crosswinds superseded global IPOs despite market rally in 2023

日本語版ニュースリリース
https://www.ey.com/ja_jp/news/2023/12/ey-japan-news-release-2023-12-27

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